2023 Fiscal Year Annual Research Report
Geographical study on hybrid food networks
Project/Area Number |
17K13579
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オルタナティヴフードシステム / ネットワーク / エビ養殖 / インドネシア / 東ジャワ州 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,これまでの調査結果を踏まえて,インドネシアにおける従来のエビ養殖が抱える主な3つの課題を検討した. <環境負荷>インドネシアのエビ養殖をめぐる主な課題の1つは土壌汚染とマングローブ林の破壊である.インドネシアでは主に1980年代以降,近代的なエビの養殖技術が普及し,マングローブ林の分布域に集約型養殖池が造成された.集約型養殖池は,化学薬品等を多投することもあり,数年の運用で生産性が低迷する傾向にある.そのため一部の養殖業者は,経年劣化した池を放棄するとともに立地転換しながら新たな池の造成を進めた.結果として,このことが生産地域の土壌汚染やマングローブ林の伐採につながった. <エビの安全性に対する懸念>日本における輸入食品中の残留動物用医薬品の検出状況を原産国別にみると,インドネシアの魚介類についてはエビが大半を占めることがわかる(山本ほか 2009).このことには,一般的な集約型養殖池における薬品の多投が関係している.たとえば,インタビューを実施した東ジャワ州シドアルジョ県の集約型養殖池では,「甲殻類・魚類の駆除」,「水草の除去」,「水質の安定化」などに関連する複数の薬剤が使用されていた.このような薬剤の利用は,人体に及ぼす影響の面で不確実性を高めることになる. <エビ生産者の地位の低下>インドネシアでは,飼料会社が生産者と資材供給に係る契約を独占的に締結するシステムを2000年代後半から運用している.同システムは,水産分野の新卒学生に対し集約的養殖の技術を供与する代わり,修了生が就業する池に飼料・稚エビの購入を求めるというものである.この契約には,生産資材の将来的顧客の確保や世界市場へのエビ供給の安定化を図りたいとの企業側の思惑が透けてみえる.このような資本による支配力の強化は,エビ供給体系における生産者の意思決定力や交渉力を相対的に低下させる可能性がある.
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