2018 Fiscal Year Research-status Report
Historical GIS research on the compositions and the genealogy of pubulished maps in the modern and early modern period
Project/Area Number |
17K13580
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
塚本 章宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (90608712)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 歴史GIS / 近世近代 / デジタルアーカイブ / 絵図 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、近世近代の出版図に描かれた都市の構図の変遷とそれらの都市間比較について、GISの空間分析機能を援用した歴史GIS分析を進め、「出版図の新しい系譜」と「出版図のGIS分析手法」を提起することである。 近世近代の出版図に描かれた都市の構図を、GISと古地図を用いて分析するためには、古地図のデジタル画像が必要になる。これまで、カリフォルニア大学バークリー校(University of California, Berkeley;以下、UCB)の日本古地図コレクションを基盤資料としつつ、神戸市立博物館や京都学・歴彩館に所蔵された「大塚コレクション」・「難波コレクション」・「秋岡コレクション」などの国内の著名な古地図コレクションの画像についても、適宜デジタル化と分析画像の選定を進めてきた。 今年度は、デジタル化作業の一方で、近世・近代出版図に描かれた京都・大坂・江戸の時代間・都市間の比較GIS分析についても取り掛かった。まず、近世近代大坂の出版図に描かれた都市の構図の変遷をGISによって視覚化した。その結果、大坂の古地図は古くから測量成果を踏まえた、現実に近い描かれ方をしていることが指摘された。 また、これまで蓄積した成果を合わせることで、京都、江戸、大坂の三都の構図の変遷を比較することが可能となり、それぞれの変遷過程の一端を明らかにした。具体的には、江戸は、測量系と非測量系の2種の系統が両立するものの、測量系出版図が次第に主な系統となってくる。大坂は、初期から測量系出版図となっていた。一方で、京都は、洛中を中心に据える従来からの構図を堅持する傾向があることがわかった。 最終年度には、これら三都の構図の比較から、類似性を抽出することで新しい系譜を構築する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、UCBの古地図コレクションの全貌解明のための作業と並行して、選定した出版図のGIS分析とそれに必要なデジタル画像化を進めた。 出版図に描かれた都市の構図と時代ごとの変化について、それらの差異・類似性を明らかにするための基礎的なGIS分析はおおむね順調に進んでいる。出版図には、実際に測量された地図とは異なる歪みが含まれていることが多く、この歪みをどのように抽出し、解釈するのかが、既往研究における課題となっていた。そうした中で、近年の歴史GISの研究成果において、歪みを含んだ古地図に描かれた都市空間をGISの分析機能を援用して定量的に把握する手法の一つとして、地図の中心(都市の中心)から描かれている地物までの距離を計測し、その結果を古地図上に等値線として表現するものである。同じ距離帯をまとまりとして把握でき、時代の変化とともに構図が変化する様子がわかる。この手法を用いて、近世から近代の出版図に描かれた三都の構図を比較分析することで、構図の変遷過程を明らかになりつつある。 こうした変化の要因には、時代や地域を表象する地物の変化や、地図作成者が実際の空間を四角形の紙面に収めていた工夫の変化との関連が考えられる。これらの分析結果を受けて、当時の都市における重要な場所や人々の空間認識を反映した「出版図の構図」についての考察が可能となる。 なお、こうしたGISを用いた古地図の分析を進めるにあたって、「古地図上の地点」・「現在の地点」・「古地図と現在の地点のリンクデータ」をデータベース化することが必要になってくる。 このように、現在までに本研究の目的とする近世から近代にかけて描かれた都市の構図の変遷とその都市間比較の分析が実施できる基盤の整備をおおむね順調に進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの成果であるGISによる描かれた都市の構図の分析手法を適用して、出版図の系譜に対して新たな視点を提起することを目的に、三都の近世近代の出版図を網羅する形で分析を進める。近世から近代までの出版図を対象としつつ、地図史・歴史地理学の先行研究の成果に立脚しながら、出版図に描かれた都市の構図や表象を、GISデータベースとして整備して比較することで、出版図の作成背景だけでなく、物理的な描かれ方の類似性を抽出した新しい系譜を構築する。 具体的には、近世から近代までの京都・大坂・江戸の絵図をGISに取り込み、時代・都市間の構図を詳細に比較分析するために、1650年からおおよそ25年ごとに期間を区切り、それぞれの期間で分析対象の絵図を選定する。1都市10図、合計30図の比較分析を想定している。この分析結果から、「近世・近代を通じた出版図の系譜」を提起し、新しい歴史地理学としての「歴史GIS研究」の実践例として有意義なものと考えらえる。その分析結果については、関連学会での報告も行う。 また、デジタル画像の閲覧のみではなく、分析に用いたGISデータを活用した「系譜検索サイト」の構築・公開を目指す。GISデータの分析に用いた作業データは、1)古地図上の地点情報、2)現在の地点情報、3)古地図と現在の地点リンク情報で、これらの情報をデータベース化しておくことで、本研究課題で対象としなかった出版図を分析する際にも、応用利用できるようにする。 なお、インターネットでの公開は、絵図の系譜を検索できるサイトとして画像データとともに、UCBの図書館もしくは、立命館大学アートリサーチセンターのサイトを予定している。
|
Causes of Carryover |
年度を跨ぐ国際学会に参加したことにより、それに係る渡航費・宿泊費・学会参加費などの支払いが完了していないため、次年度使用金が生じている。なお、それらの支払いは4月に完了する予定である。
|
Research Products
(1 results)