2018 Fiscal Year Research-status Report
近代北海道におけるニシン漁家・漁獲地域の危機対応に関する研究
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17K13582
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
服部 亜由未 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (70708370)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水産資源 / ニシン漁業 / 北海道 / 漁家経営 / 歴史地理学 / 地方紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、天然資源に依存した産業における危機対応の解明に向け、ニシン漁業を事例に漁獲量減少期の漁家や地域の展開を実証することにある。 今年度は、まず近代北海道における地方紙、『小樽新聞』および『北海道毎日新聞』(国立国会図書館・マイクロフィルム版)から、ニシン漁業関連記事を抽出し、データベースを作成することで課題へのアプローチを試みた。また秋田県における地方紙『秋田魁新報』の記事も同時にデータベースを更新し、ニシン漁獲地域と出稼ぎ者出身地域における報道の違い、ニシン漁家およびニシン漁獲地域の動向を読み取ることができた。この成果については、歴史地理学会大会共同課題シンポジウム「海からの歴史地理」において報告した。 ニシン漁獲地域としての具体的な対策として、明治30年代の早いうちから秋田県においてニシン製造品の海外輸出検討がなされていた点に注目し、その過程について主に秋田県の資料を用いながら検討をし、その結果を論文にまとめた。 青山家文書(北海道博物館所蔵)の文書整理を同館学芸員とともに実施した。青山家文書は、同館によってかねてより整理が進められていたが、1万数千点の文書群のため未整理部分が多く残っている状況であった。広範囲に複数のニシン定置漁業権を有した漁家の危機対応を知ることができる資料として、本研究課題の解明に重要な資料であるため、資料調査と文書整理を並行して行う必要があると考え、今後も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年間の研究成果を発表や論文にまとめることができ、この点は計画通りに進められた。 一方で、南弥太郎家文書の日記を翻刻して出版すること、『北海道沿岸漁場図』『免許漁業原簿』をもとに、限定した地域における他地域からの介入や時代別・浦別のニシン定置漁業権所有者数の分析まで進めることができなかったため、今後はこの点を早急に進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
『北海道沿岸漁場図』『免許漁業原簿』をもとに、限定した地域における他地域からの介入や時代別・浦別のニシン定置漁業権所有者数の分析を進める。 次に、『鰊漁況報告』(余市水産博物館所蔵)から、北海道西海岸全域における、日々の漁況、漁業協同組合やニシン漁獲地域の動向を読み取る。 また、広範囲に複数のニシン定置漁業権を有していた青山家の文書整理・資料調査を継続する。 これらに加えて、研究成果を発信すべく、南弥太郎家文書の日記翻刻本の刊行、論文の作成や研究報告を行う。
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Causes of Carryover |
南弥太郎家文書の日記を翻刻したものをまとめる予定であったが、間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。次年度分の印刷製本費として使用する予定である。
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