2018 Fiscal Year Research-status Report
現代インドの「生物文化多様性」と科学/在来知の接触をめぐる人類学的研究
Project/Area Number |
17K13586
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中空 萌 広島大学, 国際協力研究科, 講師 (60790706)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 生物文化多様性 / 科学技術社会論 / 法人類学 / 在来知 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドにおける「生物=文化多様性」に関するプロジェクトを対象とし、生物多様性をめぐる科学と在来知の折衝の場で何が起こるのかを批判的に明らかにすることを目的とする。その際に、「科学知/在来知」を首尾一貫した知識「体系」ではなく、特定の場で生成する不安定な「実践」と捉えることで、生物多様性をめぐる複数の知識の折衝の場で「何が生み出されるのか」を明らかにする。 前年度までの文献・現地調査によって、フィールドであるウッタラーカンドにおける「生物文化多様性」をめぐる取り組みは、ガンジス川の保全をめぐる各種のプロジェクト、とりわけ近年のガンジス川に法人格を認める訴訟やガンジス川の保全のための国家の大規模灌漑プロジェクトと密接に関連していることが明らかになった。そこで、本年度9月に行った現地調査では、法人格訴訟にかかわる法曹、政治家、NGO関係者、農民、また国家プロジェクトを推進する人々、反対する社会運動家などにインタビューを行った。またガンジスイルカという特定種を守る「市民」を作り出そうとする国家プロジェクトにおいて参与観察を行い、科学者と現地の人々のやり取り、特定種と人間のかかわりの中で、いかなる主体が新たに生み出されているのかを考察した。これらの調査の一部は2月に世界思想社から刊行した単著『知的所有権の人類学:現代インドの生物資源をめぐる科学と在来知』に記した。 また認識人類学から近年の複数種民族誌まで、「自然」をめぐる文化人類学や隣接分野の研究を包括的にレビューし、『文化人類学の思考法』(世界思想社より3月に出版)The World Multiple: The Quotidian Politics of Knowing and Generating Entangled Worlds(Routledgeより11月に出版)を分担執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単著『知的所有権の人類学』に加え、書籍の分担執筆3本(『文化人類学の思考法』、The World Multiple: The Quotidian Politics of Knowing and Generating Entangled Worlds(Routledge), Local Health Traditions: Pluralism and Marginality in South Asia(Orient BlackSwan) )を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きガンジス川の保全プロジェクトにおける科学と在来知の折衝、特定種の保護をめぐる「主体」の生成について、ウッタラーカンド州の特定農村において現地調査を行うと同時に、生物文化多様性をめぐる他分野の文献を包括的にレビューする。また今年度出版した単著をもとに、学際的なネットワークを築き、広島大学においてワークショップを開催する予定である。
|
Causes of Carryover |
学務(入試業務)により、予定していた国内研究会への参加をキャンセルしたため、次年度使用額が生じた。この分は来年度において、書籍購入費として使用する予定である。
|