2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reserch on Kumagusu Minakata's Newly founded English Manuscripts
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17K13593
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Research Institution | Kyoto Junior College of Foreign Languages |
Principal Investigator |
志村 真幸 京都外国語短期大学, キャリア英語科, 非常勤講師 (00625204)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南方熊楠 / ノーツ・アンド・クエリーズ / ネイチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
南方熊楠の英文論文に関する調査を、イギリスおよび和歌山で実施した。 イギリスでは、2020年2月に約10日間をかけ、『ノーツ・アンド・クエリーズ』誌に掲載された論文/原稿について調査した。また、熊楠以外の投稿者について調べることで、同時代の誌面や投稿者との関係のなかに位置づけた。 和歌山の南方熊楠顕彰館では、草稿のほか、標本の包み紙に転用されていた下書きやメモについて調査した。また『ノーツ・アンド・クエリーズ』編集部からの書簡について解読し、日記その他の資料と付き合わせることで、熊楠が誌面においてどのような役割を期待され、実際にはたしていたかを明らかにした。 19世紀後半に『ノーツ・アンド・クエリーズ』や『ネイチャー』のような学術誌でありながらも、商業誌である雑誌群が出現したことによって、潜在的な知識人層の知見が共有化され、科学や学問が急速に拡大した。そのことによって科学技術の社会における重要性が増し、現代へとつながった。 そのなかで南方熊楠が果たした役割は、学問世界が世界化するなかで、ヨーロッパ/アメリカ的な知を、アジアからの情報によって相対化させることにあった。とくに民俗学の分野において、熊楠の論文は一定の程度まで受け入れられた。ただし、リジェクトされた論文、また熊楠の論文の被引用文献の調査からは、ヨーロッパ的な文脈から大きく外れるものについては、受け入れられなかった可能性が明らかになった。あくまでも熊楠は欧米の学問世界にとって都合のいいインフォーマントとして機能していたのであり、それを越える活動は難しかったものと考えられる。
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Research Products
(6 results)