2018 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological study on tha development of cult of saint in Andes
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17K13594
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
八木 百合子 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 助教 (80622133)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アンデス / 宗教 / キリスト教 / 聖像 / 継承 / 所有 / ペルー / 物質文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、聖像の継承プロセスの解明を目的に、前年に続きペルー南部のクスコ市において調査をおこなった。調査にあたっては、同地域の住民の多くが所有し、幾世代にもわたって継承がおこなわれている幼子イエスの聖像(ニーニョ像)に焦点をあてた。この聖像の場合、とくに12月~1月の時期に各家庭に飾られるため、この時期に複数の世帯を対象に聞き取り調査を実施し、集中的にデータ収集をおこなった。調査においては、個々の聖像の来歴のほか、その継承がいかにしておこなわれてきたのか、それらを実践する人びとのあいだにどのような関係がみられるかについて明らかにすることに主眼をおいた。
これらの調査で得られたデータの分析からは、聖像の継承にかかわる複数のパターンを抽出することができた。主に親族を通じた垂直的な継承や知人を介しておこなわれる水平的な継承のほかに、この地域に伝わる特有の継承方法も明らかになった。聞取りを進めるなかで、この継承は、ニーニョ像のみにみられるものである点も判明した。また、この継承がおこなわれる背景には、譲渡者の親族や社会関係のあり方にかかわる問題だけでなく、同地域における宗教の動向が関連している可能性が浮かび上がってきた。
上記の研究成果に関して本年度は、日本ラテンアメリカ学会の定期大会およびスペイン・サラマンカ大学で開催された国際アメリカニスト会議、国立民族学博物館共同研究において報告をおこなったほか、研究誌等にも日本語およびスペイン語で論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
聖像の継承に関する膨大なデータの収集と分析をおこなった。また、それにより、これまで明らかにされてこなかった継承のパターンに関する新たな仮説を導き出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでのデータと分析結果を精査するとともに、聖像の継承にかかわる問題と対象地域における宗教の動向がいかに関わっているのかを明らかにする。その際には、当該地域の宗教の動向に関する他の研究論文やモノの継承に関する文献資料等も活用する。 そのうえで、聖像(モノ)を介して展開される信仰の様態について、キリスト教以外の事例も参照しつつ、より広い視野から検討をおこない、現代の宗教におけるモノのあり方について考察を深める。また、最終成果を論文としてまとめ、学会誌等に投稿をおこなう。
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Causes of Carryover |
国際会議出席にかかる費用を他の研究資金から支出したため。本資金は次年度に開催予定の研究集会において使用する。
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