2022 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological study on tha development of cult of saint in Andes
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17K13594
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
八木 百合子 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (80622133)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンデス / ペルー / キリスト教 / カトリック / 聖像 / 所有 / 継承 / 宗教的なモノ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる本年度は成果のとりまとめと並行して、ペルー南部のクスコ市において聖像の所有と継承に関する補足調査を実施した。特に今回の調査では、これまでの調査で明らかになった第三者への聖像の譲渡というこの地域独特の慣習について重点的に聞き取りをおこなった。これがアンデス地域における聖像の継承の持続性を担保していると同時に、宗教的なモノ・人・信仰の関係を読み解くうえで鍵となると考えられるからである。調査の結果、1)クスコでは個人が所有する聖像の継承は親族や知人の間でおこなわれるのが一般的であるが、第三者から聖像を譲り受けるという特別な機会が偶発的に発生しており、2)こうした譲渡形式とそれにまつわる慣習について、人々のあいだに一定の理解と宗教的な解釈の枠組みが存在することがみえてきた。上記の点を踏まえ、現代のアンデス地域における聖像の継承の様態について、クスコのニーニョ像を事例に分析・考察した点を論文にまとめた。 また本研究期間には関連する成果として、アンデス高地の民族誌的研究を集成したスペイン語の論文集 Etnografia Andina: Recorrido y Valoracion Cultural(Senri Ethnological Studies 111) を2022年6月に刊行したほか、本研究に関連して約2年半にわたり代表者として主催してきた国立民族学博物館の共同研究(モノからみた現代の宗教的世界の諸相)の最終成果論文集を次年度に刊行予定である。
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