2018 Fiscal Year Research-status Report
制度理論の再検討-グローバル法秩序の構造把握の試み
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17K13598
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 圭介 京都大学, 法学研究科, 准教授 (00612392)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法哲学 / グローバル化 / 制度 / ニール・マコーミック / サンティ・ロマーノ / 法理論 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究二年目にあたる2018年度も、主として、前年度の研究成果を踏まえ、本研究の目的である、グローバル化という今日的な状況の下で生じた法現象の説明・分析に有用であるような概念モデルを、「制度理論」と呼ばれる理論枠組に準拠するかたちで設定するための準備作業を引き続き行った。具体的には、以下の三つの研究を実施した。 ①昨年度からの継続として、ニール・マコーミックが提唱した新しい類型の「制度理論」に着目し、その理論が設定する概念モデル、及びその理論を支える哲学的な着想をめぐる検討を行った。具体的には、ヨーロッパ統合の法構造・政治構造をめぐる分析に現れる、マコーミックの制度理論の設定する概念モデルとその哲学的な背景を検討した。 ②次いで、今年度の主たる研究として、法概念モデルの設定の基礎を提供する「制度理論」につき、その従来の主唱者たちが提示する議論のサーヴェイに取り組んだ。具体的には、とりわけサンティ・ロマーノが提唱した古い類型の理論に着目し、その理論内容ならびにそれを支える哲学的な着想、そして彼の理論に対する様々な批判を検討した。 ③加えて、本研究と密接に関連するものとして、グローバル化という今日的な状況における、「制度理論」に適合的な法的推論のあり方についての検討を行った。具体的には、マコーミックの制度理論に基づく法的推論の考察を出発点としつつ、「関係性」という要素を取り入れた法的推論のあり方を提唱する議論を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に設定された二年目の計画におおむね沿った形で研究が進行している。なお、上記①については既に論稿が予定されており、③についても学会報告が行われ、論稿のかたちで公表されることが予定されている。②については、研究三年目に論稿のかたちで公表できるように準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究三年目にあたる2019年度もまた、当初に設定された計画に準拠するかたちで、本研究の主たる目的の達成のために、以下の研究を実施することを予定している。 ①研究一・二年目の成果を踏まえて、グローバル化という今日的な状況における「制度理論」に基づく法概念モデルの設定に向けた検討を開始する。これまでのサーヴェイにより得られた新・旧の「制度理論」の知見を手がかりに、グローバル化という文脈の特性を踏まえて、適切な法概念モデルの設定を探求する。 ②加えて、余力があれば、「制度理論」が、グローバル化という今日的な状況における法概念モデルの設定という特定の問題を越えて、あるいはこの問題に関連するものとして、様々な分野での法の理論的な探求において持ちうる含意についての検討も行いたい。具体的には、この理論が法と道徳の関係、法的推論のあり方などについて与えうる知見について、考察を行う。
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