2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K13601
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
西迫 大祐 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (10712317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感染症 / 統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀イギリスの感染症の予防を題材として、公衆衛生と自由を両立させることが可能な思想的基盤を探求することが目的である。本研究は、具体的には4つの柱によって構成されており、①チャドウィックおよびミルの法哲学的分析、②感染症予防法や公衆衛生法などの法整備における議論と反発の分析、③コレラや結核などの具体的な感染症の予防と反発、④反ワクチン運動の分析である。 平成29年度は主に①について、平成30年度は主に④について、分析および論文の公表を行った。令和元年度は育児や本務校の変更などから②、③についての分析ができずに延長を申請した。令和2年度は、主に前年度にやり残した②、③の分析とオンラインによる学会発表を行った。また④の反ワクチン運動に関する口頭発表や、本研究の補助線となるコロナ禍についての研究論文も執筆した。 令和3年度の研究は、令和2年度に行なった学会発表を論文の形で公表した。詳細は、昨年度の研究実績の概要に書いたとおりであるが、1880年代のイギリスにおいて形成されていく「英国システム」と呼ばれる感染症予防の方法について、届出義務と隔離を中心とする歴史的な分析を行なった。紙面の都合上、報告内容を大幅に削除することとなった。削除した内容については、改めて何かの形で発表したい。 令和3年度は、日本法哲学会において『感染症の統治を再考する』と題したワークショップを行なった。大北全俊氏、河嶋春菜氏、和田賢治氏に登壇いただき、自粛と統治について、憲法の観点からの日仏の比較、偶発性の恐怖と安全保障について、それぞれお話しいただいた。筆者は総括コメントにおいて、19世紀イギリスの感染症の問題と比較しながら、現在のコロナ禍の統治の古くから受け継がれている部分と、新しく登場した統治技法について言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる資料の分析はおおむね順調に進んでいる。しかし、現地でしか手に入らない資料の分析はできておらず、今後のコロナ禍の状況をみながら、可能であれば渡英して分析をすすめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記の令和3年度のワークショップ概要が、『法哲学年報』において掲載されることが予定されている。 研究の推進方針は前年度と同様である。これまでの研究で、概ね全体像を把握することができたために、上記①から④までの一次資料を精読・分析しながら、書籍化を念頭において整理し執筆していくことを考えている。 一次資料の分析には、NII-REOやPROQUESTのようなインターネット・サービスを活用しながら、研究を進めていくことを考えているが、コロナ禍の状況によっては、渡英して分析をすすめたい。いずれにしても、国内で可能な限り研究を進めておき、渡英し研究する際に必要な部分を可能な限り少なくしておくつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍により渡英が不可能であったためである。本年度も、状況をみながら渡英も選択肢として考えておくが、難しそうであれば、インターネットなどを活用して研究をすすめたい。
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Research Products
(2 results)