2021 Fiscal Year Research-status Report
'Vorbehalt des Gesetzes' in the New Era
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17K13607
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山田 哲史 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (50634010)
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Project Period (FY) |
2021-03-01 – 2023-03-31
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Keywords | グローバル化 / 民主政論 / 法律 |
Outline of Annual Research Achievements |
在外研究による研究中断を終え、2021年度は9月からの7カ月間の研究実施となった。在外研究中の研究課題とも連携させつつ、2021年度は、法律の留保、言い換えれば、議会制民主主義を前提とした、公権力行使の正統化と統制の枠組みを根本的に見直すような研究を中心に進めてきた。具体的には、グローバルに形成される規範の民主的正統性を担保するための思考として、我が国の政治学でも最近注目を集めるようになってきている、ステークホルダー・デモクラシー論について、法理論、とりわけ実定法論に接続できるように、従来の議論状況を、実定法論への応用可能性というこれまでの政治学や法理学における検討では必ずしも十分に持たれてこなかった視点を持ち込んで、整理・分析した。研究成果として、研究分担者として参加する他の科学研究費補助金の研究プロジェクトや在外研究の研究課題とも接続し、グローバルな法多元主義や、グローバルな公法理論とも接続する形で説明した論文を執筆した。なお、この論文の刊行は、2022年度にずれ込んでいるが、年度が改まって間も無く刊行された。 上記のような当初の研究課題からはある意味拡大した部分の他、当初から検討課題となってきた、外来規範の国内法体系への取り込み、国内法体系における位置づけ、国内民主政論(とりわけ、法治主義とも混合された、議会制定法たる法律による行政統制)との関係で論じる問題についても取り組んだ。具体的には、国際人権法の国内裁判での実務上の最近の取り扱いを、確認し、検討する作業を行い、国際人権法学会からの招待を受け、これを同学会の研究総会(ただし、オンライン開催)にて報告した。 さらに、グローバルな視点から、憲法の基本問題に取り組む一般向け書籍の編集にも参加し、研究成果のアウトリーチ作業も進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、本研究は、在外研究による中断を行なっており、2021年の半ばの再開となっている。したがって、通常よりも、中断期間を踏まえて考えると、当初の予定よりも長い期間継続していることとなる。そのため、在外研究や、並行して従事した研究課題において得られた知見、また、それには至らない「視点」のようなものも含めて、計画当初から見ると発展的な研究目的・目標も生じてきている。また、このような拡大は、ある意味、研究が着実に進んでいるからこその成果であるとも言える。 他方で、とりわけ2021年度は、中途からの研究再開となったこともあり、実績の数自体は必ずしも多くはない。再会に際して、軌道修正、それに伴う試行錯誤という状況がなお続いていることは否めないところもある。この状況を早期に脱して、2022年度の研究期間の終了に向けて、態勢を立て直していきたいと思っている。 以上のような次第で、研究計画を立てた当初の想定は、従来の研究で概ね進められたところがあるし、それによる、加えて、他の研究課題とのシナジーによって新たに加わった研究関心、研究目的・目標が加わるなど、捉えようによっては、研究の大きな進捗が見られる。ただし、上記おような新しい研究関心、目的・目標に取り組む態勢が、中断からの再開という事情もあり、十分に整えられていないところがあることから、総合的に見たときには、「概ね順調に進展している。」という評価を下した所以である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」の理由分析の欄でも触れ、示唆してきたように、グローバル化に伴う法多元主義の中での、民主主義、とりわけ従来の議会制民主主義論の見直しを踏まえた、法律の留保論の根本的な再定位を最終課題として取り組む必要性が生じてきている。この検討・分析に着手した研究成果も少しずつ出してきている。研究課題の最終年度となる2022年度は、この方向性を発展させ、研究課題の一応の決着を提示できるように、研究を進めていきたいと考えている。ただし、研究中断からの再開で、研究態勢の整備に不十分なところがあるので、これを早期に建て直し、安定化させる予定であることは言うまでもない。 さらに、最終年度であることを踏まえて、アウト・プット作業にも力を入れていく予定である。このアプト・プット作業にあたっては、研究成果の一般社会への還元という観点も加味し、報告自体は学術的なものになるかもしれないが、最近の社会情勢、社会問題への本研究課題の成果の応用可能性を提示できるように努めたい。幸い、すでに、国内外の学会、シンポジウムから、新型コロナウイルス感染症への対策という、具体的かつアクチュアルな問題をめぐる報告を行う招聘を受けており、この格好の機会を活かして、本研究課題の成果を提示できるようにしたい。また、可能な限り、一般向けの書籍や講演などにも取り組み、より一般社会に還元できるような形でのアウト・リーチも進められるよう努力したいと考えている。
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