2017 Fiscal Year Research-status Report
移住者の信教の自由への配慮と規制をめぐる比較憲法的考察
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17K13608
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
西山 千絵 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (20633506)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 信教の自由 / 比較憲法研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、わが国に生活の拠点をおく在留外国人(あるいは外国にルーツをもつ日本人)の自由な宗教選択がどこまで機能しているのかという観点から、他の結婚移住女性の分担研究での聞き取りの際から得られた情報をもとに、県内の一部キリスト教会を対象に意見交換する機会を得た。移住者コミュニティーが教会運営に与える影響については、意見交換での指摘を踏まえながら、検討に加えた。そのほか、外国における移民の宗教的自由(宗教的行為の自由)に関する文献の収集と整理を行った。憲法上の保障される自由と実際の移民政策との関連(もしくは矛盾)については、現在検討を進めているところである。 わが国の宗教的自由に関しては、配慮の方向性にかかる政策自体が見当たらないところで、法政策・法制度までの議論に展開しづらいものの、在留外国人とかかわりの多い宗教施設に対するヒアリングを実施し、多様な宗教の併存する社会における信教の自由の一局面とも言うべき衝突-誤解ないし無理解に端を発する配慮の欠如-について、発見なり知見を得たいというのが、昨年度の研究のなかで明確化された問題関心であり、もとより今年度も同様である。 これまでに収集した資料で検討した結果、移住者の送出国のうちフィリピン憲法における宗教的自由の保障とその傾向を捉えることはできたが、その他のベトナム、ネパール等の詳細な分析は、次年度に予定している残りの地域の検討と合わせ行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においてわが国における移住者の送出国における信教の自由・政教分離のあり方について、文献的に検討することが完了しなかったため、全体像の把握が計画どおりには進まなかったことから、上記の区分とした。 予定していなかった沖縄県内での聞き取りを実施できたことは、研究の進展にとって意義ある知見を得るきっかけとなったが、今年度の成果について公表するに至っていない。この点、次年度においては詳細な分析をさらに加速させ、論文にまとめることとに重点的に取り組むこととなる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、信教の自由に関してわが国が多文化化社会となっていくなかで直面する課題を多角的に考察し、比較憲法の手法によって、法政策・法制度の基礎となる議論につなげる提言をなしうるところに到達目標がある。資料の収集に引き続きつとめ、多様な宗教施設の関係者からの聞き取りも踏まえて、現時点における問題の所在を明らかにしていく。分析・検討を進める過程で、追加調査の要否を検討する。 なお、次年度はわが国の状況から外国(米国の一部州における議論)に重点を置き、比較対象地域を広げていく。その成果は年度内に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
変更交付決定(若手研究(B)における独立基盤形成支援)を受けることができたため、当初の計画していた以上に物品費による使用が可能となった。書籍などはより多く購入することができたが、相互利用による県外からの資料の取り寄せなどは行うことがなかった。また、その他購入するパソコン等の物品の選定が遅れた分、次年度使用額を残すこととなった。 次年度は、研究調査にかかる研究旅費の支出、関連書籍・消耗品の購入とともに、調査先における専門的知識の提供者に対する謝金でも新たな支出が増える予定である。
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Research Products
(1 results)