2017 Fiscal Year Research-status Report
「プレスの法理」の更新―デジタル・メディア革命以後の民主政の規範的再生に向けて
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17K13612
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
水谷 瑛嗣郎 帝京大学, 法学部, 助教 (80783688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メディア法 / インターネット / 憲法 / マスメディア / ビッグデータ / 人工知能 / 表現の自由 / フィルターバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルメディア革命以後における報道機関の憲法上の役割に関する研究について、本年度はこれまでの研究業績をベースとしつつ、技術進化による言論空間の状況変化に合わせてさらなる研究の発展を目指した。まず第一に、インターネットが形成する言論プラットフォームへのアクセスを行う自由について、アメリカの過去から最近に渡る判例をまとめたうえで、近時の学説状況について分析・検討を行った。それにより、SNS(フェイスブックなど)のようなデジタル言論空間の「ネットワークにつながる自由」の存在が、これまでのパブリックフォーラム論の影響を受けながらも、その独自の法的地位を形成しつつあるという示唆を得た。 第二に、ここ十数年の間に起こった情報技術の劇的な進化による言論空間の状況変化について分析・検討を行った。特に、初期のインターネットでは「デイリー・ミー(自分で選択した自分だけの新聞)」現象の影響が指摘されていたが、その後のビッグデータとAI技術の発展により、昨今では個人の趣向を事前予測する予測エンジンの介在を受けた「フィルターバブル」あるいは「デイリー・ユー」現象が徐々に姿を現しつつある。この現象による言論空間および民主政治への影響を分析したうえで、その処方として民主政治に必要不可欠な機能遂行を行う「プレス」の存在と「プレスの自由」を現状に合わせた形に鋳直す必要性が、確認できた。 第三に、以上までの分析を基に、その処方として「プレスの自由」を「統治論」の観点から再構成することについて検討した。その一環として、植民地時代のアメリカにおいて「プレスの自由」が、「自由のパラディウム」として自由な政府を維持する能力を期待されていたことを確認することができた。この観点は、「プレスの自由」を「統治論」の観点から再構成する点で非常に大きな示唆となった。 以上に関し、今年度は計3本の論稿を公刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、研究の進展は順調であると考える。ただし、いまだ検討の大半が総論的なものにとどまっているため、今後は実際に現代に生じている問題に対処する各論(フェイクニュース問題や報道価値の判定、放送制度の在り方)について検討を重ねる必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画にある内容に沿いつつ、放送制度、フェイクニュース問題、さらに現代における「報道価値」判断についての検討といった、現在の状況変化を踏まえた各論的検討に重心を移していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
初年度は関連書籍の購入を中心に支出を行う予定であったが、希望していた書籍のうち、多くの購入を年度内に終えることができなかった。それら書籍の購入は次年度に済ませる予定である。
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Research Products
(3 results)