2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reexamination of the influence of personal autonomy theory on the Japanese constitutional welfare rights
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17K13615
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 健太 早稲田大学, 政治経済学術院, その他(招聘研究員) (50737773)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生存権 / 人格的自律 / 人格的利益 / 仮説的構成概念としての人格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生存権論における人格的自律説(人格的利益説)の理論的影響を再検討するものである。具体的には、人格的利益説に影響を及ぼしていると思われるアラン・ゲワースとジョン・ロールズらの人権論の構造を明らかにし、両者の間に理論構造の転換があることを明らかにしようとするものである。 本年度は、主として、ロールズの理論において生じた「政治的転回(ないし展開)」にともなって、ロールズの人格の構想に変化があったのか。あったとしてどのような変化があったのかについて検討を行った。 『正義論』においては、原初状態からの正義原理の導出が詳しく論じられていたのに対して、『政治的リベラリズム』においては、原初状態の議論は後景に退き、代わりに、理に適ってはいるが異なった包括的教説を抱く諸個人の間で成立する重なり合う合意に正義原理は支えられるとされる。この「変化」をめぐっては、一方に両著の間の断絶を強調する見解があり(政治的転回があったとする説)、他方にそうした変化にもかかわらず、なお一貫した視点で両著を読み解くことが可能とする見解がある(「変化」を政治的展開とみる説)。これらの見解の対立は、重なり合う合意を、正義原理の正当化の問題(『正義論』第一部の差し替え)と見るか安定性の問題(『正義論』第三部の展開)と見るかに由来するのであろうが、いずれの立場に立っても、ロールズの人格の構想はカント的な包括的教説から政治的構想へと変化していると言わざるを得ないというのが検討結果である。しかしながら、ロールズの人格の構想は、それがカント的教説であれ政治的構想であれ、正義に適った社会の基礎構造を明確にするために、理論的に構成された規範的な構想であるという点でなお共通していよう。
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