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2018 Fiscal Year Research-status Report

非国際的武力紛争の規範原理再考――その史的検証――

Research Project

Project/Area Number 17K13616
Research InstitutionShizuoka University

Principal Investigator

川岸 伸  静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (30612379)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords非国際的武力紛争の国際化 / ICTY / 武力紛争法の発展
Outline of Annual Research Achievements

2018年度は、非国際的武力紛争の国際化に関する旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)判例の総合的な検討を主軸に据えて研究を遂行した。本テーマは、当初は科研テーマとは関係が希薄であると考えていたものの、分析を進めていくうちに実は密接に関連していることが後に判明した。旧ユーゴスラビア紛争においては、政府と叛徒との間に非国際的武力紛争が発生している最中、外国が叛徒の側に立って干渉するという事態が多々生じた。この事態に直面して、ICTYは、どのような条件が満たされれば、非国際的武力紛争が全体として国際的武力紛争と見なされるかという問題に対処することを迫られることになった。検討の結果、次の諸点を解明することができたと言える。第一に、国際的武力紛争と非国際的武力紛争という二つの「武力紛争」の併存がICTYにとっての起点となっている。第二に、この併存を起点とした上で、判例全体の傾向として言えば、外国の二つの関与、すなわち、干渉と支配に基づきそれぞれ非国際的武力紛争の国際化を導くというアプローチにICTYは立っている。第三に、非国際的武力紛争の国際化のメカニズムとして、支配は、従来の国際的武力紛争の概念を維持するのに対し、干渉は、政府対叛徒の紛争それ自体を新たに同概念に取り込むべく同概念の拡大をもたらす契機を内包している。第四に、この点に鑑みると、支配とは対照的に、干渉は、これまで非国際的武力紛争として分類された政府対叛徒の紛争それ自体に国際的武力紛争の規則を適用することを可能とすることから、武力紛争法の発展を導くもと捉えることができる。第五に、しかし、その一方で、この武力紛争法の発展は、叛徒の地位に関する問題に顕著であるように、基本的に国家にとって受け入れることのできない要素を抱えるものであるため、看過し得ない限界を抱えている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

科研テーマに直結するICTY判例の展開の一端を総合的に検討することができた。もっとも、ICTY判例の展開の分析としては、2018年度に取り扱ったこの非国際的武力紛争の国際化に関する論点探求のほかに、いわゆる人道化言説(慣習国際人道法上の非国際的武力紛争への国際的武力紛争の規則の移植)を考察することが求められている。これらの二つを深く掘り下げることが科研テーマにとって必要不可欠であるところ、ひとまず、2018年度は、非国際的武力紛争の国際化に関する論点探求に対して検討の区切りを付けることができたと言える。

Strategy for Future Research Activity

次年度からの研究の推進計画として、二つの柱があると言える。第一は、ジュネーヴ諸条約追加議定書の成立過程の検討であり、第二は、1990年代中葉以降のいわゆる人道化言説の検討である。第一の検討は第二の検討の前段階として位置付けることができる。ジュネーヴ諸条約追加議定書の成立過程においては、(国際的武力紛争に適用可能である)敵対行為規則の非国際的武力紛争への導入の提案が幾度も見られたものの、最終的にこの提案は諸国によって拒絶されることになった。この一連の経緯において、諸国は何を根拠として非国際的武力紛争への敵対行為規則の導入を否定したのだろうか。2018年度中に赤十字国際委員会(ICRC)の図書館・アーカイブスにおいてジュネーヴ諸条約追加議定書の成立過程に関係する文書はすでに入手済みである。これらの文書を読み解くことを通じて上記問いに答える必要がある。これに対して、1990年代中葉以降、ICTYは、慣習国際法上、非国際的武力紛争への敵対行為規則の導入を可能とする判例を積み上げてきた。この結果、条約・慣習国際法の法源上の相違はあるものの、非国際的武力紛争への敵対行為規則の導入は、ジュネーヴ諸条約追加議定書の成立過程において拒絶された一方、ICTYによって強力に推し進められることになった。では、ICTYは、どのような論理を用いて、この非国際的武力紛争への敵対行為規則の導入を図ったのだろうか。ジュネーヴ諸条約追加議定書の成立過程からいわゆる人道化言説に関するICTY判例までに至る展開を検討・分析することが、次年度からの研究の推進計画の柱である。

Causes of Carryover

外国の図書館・アーカイブスにおける資料調査に加え、国際会議における科研テーマに関する研究報告の予定が入ったため、次年度使用額が生じることになった。さらに、科研テーマについての著書が近年数多く刊行されているため、それらを入手する必要性が生じることになった。

  • Research Products

    (4 results)

All 2019 2018

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 3 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] 非国際的武力紛争の国際化に関するICTY判例の形成と展開(四)2019

    • Author(s)
      川岸伸
    • Journal Title

      「法政研究」

      Volume: 23 Pages: 1-37

    • Open Access
  • [Journal Article] 非国際的武力紛争の国際化に関するICTY判例の形成と展開(五)・完2019

    • Author(s)
      川岸伸
    • Journal Title

      「法政研究」

      Volume: 23 Pages: 99-128

    • Open Access
  • [Journal Article] 非国際的武力紛争の国際化に関するICTY判例の形成と展開(三)2018

    • Author(s)
      川岸伸
    • Journal Title

      「法政研究」

      Volume: 23 Pages: 31-60

    • Open Access
  • [Presentation] Reconsidering the Classification of Transnational Conflict with Armed Groups in International Humanitarian Law2018

    • Author(s)
      Shin Kawagishi
    • Organizer
      The Seventh International Four Societies Conference
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2019-12-27  

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