2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering the Principles of International Humanitarian Law Applicable in Non-International Armed Conflict: Historical Perspectives
Project/Area Number |
17K13616
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
川岸 伸 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (30612379)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 赤十字国際会議 / ジュネーヴ外交会議 / 敵対行為規則 / 慣習国際人道法の認定方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程、さらに旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)の判例の検討を行った。まず、ジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程の検討からは、次の諸点が明らかとなった。すなわち、第1に国際的武力紛争に適用される敵対行為規則を非国際的武力紛争に導入する提案が赤十字国際委員会(ICRC)によって幾度となく行われたこと、第2に赤十字国際会議(1957年ニューデリー会議・1965年ウィーン会議・1969年イスタンブール会議)においてはこのICRC提案に対して概ね積極的な反応が見られたこと、第3に政府専門家会議(1971年・1972年)とジュネーヴ外交会議(1974年から1977年まで)においては積極的な反応と消極的な反応の双方が示されたこと、第4にしかし、この提案を認めてしまうと叛徒の側に合法的な敵対行為が存在することを肯定することになるため、領域国政府の国内法執行措置(逮捕・訴追・処罰)と両立しない敵対行為規則は非国際的武力紛争に導入することが困難であると最終的に諸国によって判断されたことである。次に、ICTYの判例の検討からは、次の諸点が明らかとなった。すなわち、第1にジュネーヴ諸条約第二追加議定書に欠如している敵対行為規則が慣習国際法上非国際的武力紛争に適用されることが認められたこと、第2にこの慣習国際法の認定にあたっては伝統的な慣習国際法の認定方法ではなく現代的な慣習国際法の認定方法が採用されたこと、第3にこの現代的な慣習国際法の認定方法それ自体は一定の合理性を持ったこと、第4にしかし、慣習国際法を認定するためにICTYが依拠した証拠については、当該慣習国際法の存在を正しく導くものであるかどうかが疑わしいものが見受けられたことである。これらの検討を踏まえると、ICTYの判断の妥当性については、説得力に欠ける点を見出すことができた。
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