2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13620
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石塚 智佐 東洋大学, 法学部, 准教授 (30614705)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際司法裁判所 / 管轄権 / 原告適格 / 先決的抗弁 / 紛争の存在 / 民衆訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年多様な紛争が国際司法裁判所(以下、ICJ)に付託されていることに鑑みて、これら事件における管轄権基礎と請求内容の関係について研究することを目的とする。2 つの関係を検討することにより、国家はどこまで多様にICJ を利用することができるのか、それに対してICJ はコントロールすることが可能なのか、実証的研究を試みる。本年度は、2016年10月に3つの判決が出されたマーシャル諸島核軍備競争停止及び核軍縮交渉義務事件の管轄権判断を重点的に検討し、『国際法研究』第6号(2018年3月信山社刊行)に論文「国際司法裁判所における近年の付託事件の多様化と管轄権審理―マーシャル諸島事件を中心に―」を公表した。本件は、具体的権利が侵害されていないにもかかわらず、原告が選択条項受諾宣言に基づくICJ管轄権を主張しており、民衆訴訟としてICJ管轄権が前例のないほど広く認められる可能性があり、本研究の重要な検討対象の1つであった。しかし、ICJは紛争の不在を理由に管轄権を否定した。当事国間の紛争の存在と原告適格の問題は近接した問題であるため、これらに関する裁判所の判断論理や問題点を中心に分析を試みた。本稿の中心部分は2017年3月の東大国際法研究会で報告済みであったが、そこでの質疑応答や反省点を基に、議論を発展させた。 また、本研究のもう1つの重要な検討対象である、ICJ判決の履行を実質的に求めて提訴する事件についても、資料収集や分析に着手しており、次年度中に研究成果の一部を公表することが決まっている。 さらに、管轄権基礎と請求内容の関係について網羅的に検討するための一助として、これまでの常設国際司法裁判所(PCIJ)・ICJ判例を再検討し、本年度は当事国の合意によって付託された事件について特に重点的に研究を進め、次年度以降に公表する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究に予想以上に時間がかかったため、当初予定していた平成29年度中の研究成果として公表できなかった論点もあるが、これらは次年度以降に公表する見込みがついている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って、研究を進める。
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Causes of Carryover |
予定していった海外出張を実施できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度も都合上海外出張は難しいため、研究遂行に不可欠な書籍・物品購入を中心に使用する。特に、ICJをより多角的に分析するために、ICJ以外の国際裁判の文献も購入して研究の一部に加えたい。
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