2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13620
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石塚 智佐 東洋大学, 法学部, 准教授 (30614705)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際司法裁判所 / 管轄権 / 裁判条項 / ジェノサイド条約 / 人種差別撤廃条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は特にジェノサイド条約や人種差別撤廃条約という、人道・人権の分野において崇高な目的を有する多数国間条約の裁判条項に基づき国際司法裁判所(ICJ)に付託される事件について、その裁判条項の内容と付託される紛争の実体に着目しながら、検討を行った。 ジェノサイド条約に関しては、ガンビア対ミャンマーのジェノサイド条約適用事件のような具体的被害を受けていない国家からの提訴が現実的に行われるようになったことに着目しつつ、2006年のコンゴ民主共和国対ルワンダのコンゴ領武力活動事件管轄権判決に付された共同個別意見で示された問題を契機として、当該裁判条項に対して付された留保の可否の問題に関して検討を行った。その際、国連国際法委員会の「人道に対する犯罪」条文草案等の裁判条項と比較することで、近年の多数国間条約における裁判条項の位置づけ等を確認することができた。 また、ウクライナ対ロシアの事件やカタール対UAEの事件のように人種差別撤廃条約の裁判条項に基づきICJに付託される事件が増えており、他の多数国間条約裁判条項とは異なる特徴を有する人種差別撤廃条約裁判条項の解釈が注目されるようになったが、人種差別撤廃委員会の国家通報制度との関係も含めてこの問題を検討した。カタール対UAEの事件が事項的管轄権の欠如により訴訟終了したため、判断されずに残された問題は多いものの、一定程度の検討を行うことができた。 これらの研究成果の一部は次年度に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も休職期間があり、当初の目的を十分に達成できたとはいえない。それでも、本研究に関わるICJの最新の判例の分析をすぐに行い、成果を公表する目途が立っているという点で、一定程度の研究を進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始当初は2019年度で研究期間が終了となる予定であったが、2018年度及び今年度と休職期間があったため、2021年度も引き続き本研究を続けることとなった。研究再開後も基本的には研究計画書に従って研究を進めているものの、当初の予定より研究期間が延びていることもあり、研究対象となるICJには予期していなかった事件が付託されるようになった。こうした事件に関してはいち早く分析を行い積極的に国内外に研究成果を公表することで、本研究の研究目的を遂行できるよう努めたい。特に2021年度は、人権条約に基づく国家通報制度、国家間裁判の活性化に着目し、これらの紛争の概要やICJに付託された事件との比較を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
昨今の社会情勢にかんがみ、海外含む出張は基本的に難しいと考えている。したがって、研究遂行に不可欠な書籍・物品購入を中心に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 国際法の現在2020
Author(s)
寺谷広司、伊藤一頼
Total Pages
448
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4-535-52481-1
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