2017 Fiscal Year Research-status Report
The Effect of Armed Conflict on Treaties in Contemporary International Law
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17K13621
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
若狭 彰室 立教大学, 法学部, 助教 (00780123)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 武力紛争 / 戦争 / 条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,「武力紛争が条約に及ぼす効果」と関わる,第2次大戦以降の国際的な法典化作業,及び,武力紛争・武力行使の際の条約の効力・適用可能性が問題となった国際仲裁事例及び国際裁判例を,過去の「戦争が条約に及ぼす効果」論から導かれる理論枠組に従って検討した。 具体的な検討対象は,万国国際法学会(IDI)による「武力紛争が条約に及ぼす効果」法典化作業(1976-1985),国連国際法委員会(ILC)による条約法法典化作業(1950-1966),及び「武力紛争が条約に及ぼす効果」法典化作業(2005-2011),並びにDalmia Cement事件(国際商業会議所仲裁裁判所:1967),ニカラグア事件(ICJ:1984/1986),オイル・プラットフォーム事件(ICJ:1996/2003),核兵器合法性勧告的意見(ICJ:1996),及びエリトリア・エチオピア請求権委員会裁定(2005)である。 検討の視角は,「武力紛争」ないし「敵対行為」に関わるいかなる要素が,条約の効力・適用可能性に影響を与えるものと捉えられているか,そして,その根拠は何か,である。 検討の結果として,国際判例には,武力行使の法的性質に着目するものと,武力紛争の存在それ自体に着目するものが見受けられ,それらは前提とする判断枠組が異なると考えられること,及び,法典化作業では,過去の「戦争が条約に及ぼす効果」論の影響が残されつつも,武力行使の法的性質に基づく「武力紛争が条約に及ぼす効果」の規律がわずかながら進展してきたことを読み取れることが明らかとなった。 この検討の意義は,「武力紛争が条約に及ぼす効果」が,「戦争が条約に及ぼす効果」の伝統的議論枠組のように,「武力紛争」という「状態」ないし客観的事実の法的効果とされる必然性はないこと,他方で,単なる条約法の一般規則の適用問題にも解消されないことを示す点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り,平成29年度中に,「武力紛争が条約に及ぼす効果」に直接的に関わる法典化作業,及びこれと密接に関わる国際判例の分析を行うことができた。その成果は,まだ公表には至っていないが,博士論文の一章としてまとめられた。以上から,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,当初の計画通り,前年度の分析結果について,より広い観点から,現代国際法の構造に照らした評価を行う。具体的には, 武力行使の規制(jus ad bellum)と武力紛争法(jus in bello)の関係,及び責任法上の違法性阻却(特に「自衛」)と条約法上の終了停止事由の関係という観点から理論的評価を予定している。
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Causes of Carryover |
約1%にあたる額が次年度使用額として残った。その理由は,29年度及び30年度のいずれの研究計画にも関わる一部の資料を30年度に購入することとしたためである。使用計画に大きな変更はなく,武力行使及び責任法に関わる文献の収集に充てる予定である。
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