2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of industry-revel minimum wage system
Project/Area Number |
17K13624
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
神吉 知郁子 立教大学, 法学部, 准教授 (60608561)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 最低賃金 / 同一労働同一賃金 / 正規非正規間格差 / 労使自治 / 均等・均衡待遇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,産業別最低賃金の再構築を足がかりとして労使自治機構のあり方を再考しようというものである。労使自治の見直しは,非正規労働者の待遇改善や,同一労働同一賃金の実現にむけた均衡・均等待遇の条件整備とも位置づけられ,最終的には,労働者に保障された個別の権利をどう実現するかという根本的な課題への答えにもつながっていく。最終年度は,産業別組合に雇用問題への対応の実態をインタビューするなどして最新の問題状況を把握しながら,比較法的観点も交えて,最低賃金のみならず,賃金設定一般および解雇といった労働契約関係の重要な局面における法解釈論や制度論を提示する段階へと研究を進めることができた。 労働条件設定の場面における関係労使の関与については,とくに労使の利害が複雑に絡み合う条件設定において,当事者が賛成・反対(要求・諾否)という単純な意思表示を行うだけでは限界がある。さらに昨今では,パート,有期,派遣などの非正規労働者が増加して労働者の多様性が進展し,労働者間の利害対立への目配りが求められるなかで,組織率の低い非正規労働者の利害を誰が調整するかも喫緊の課題である。つまり,労働条件設定においては,最低賃金のような画一的な保護にとどまらず,均衡待遇の実現のような複雑化への対応こそが求められていることが示唆される。このような問題に対して,現行法上の規律を詳細に検討し,まずは実体規制の射程における限界や解釈論上の課題を明らかにした。もっとも,自主性尊重という名目で労使の交渉力格差の不均衡を放置すれば,公共の利益実現とのバランスが問題になる。そこで,労使自治の尊重が形骸化しないためには当事者の自律的な関与プロセスの尊重こそ重要であることを論証し,当該プロセスの尊重を条文解釈のなかに落とし込むことで,実務上求められている具体的な解釈の方向性をまとめ,後掲の各論文の形で公刊することができた。
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