2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13628
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
サイ ユンチ 信州大学, 学術研究院社会科学系, 助教 (10794430)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 作為義務 / 告知義務 / 詐欺罪 / 不作為犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不真正不作為犯における「作為義務」を負う主体の特定の基準にかかわる問題を解明し、不作為犯の適切な処罰範囲を確保することである。 本年度は、昨年度の研究内容を踏まえて、各論的考察を行った。具体的には、「詐欺罪」における「告知義務」の根拠に関する比較法研究が行われた。 その結果、以下の結論が導き出された。①日本の判例に援用されている「信義則」は、告知義務の限界を明確に画定できるものではなく、より実質的な基準が求められている。学説において、告知義務の有無を判断するファクターとして、当事者の情報収集可能性・能力や、当事者間の力関係を考慮に入れる必要があると指摘するものも存在するが、告知義務の判断内容の実質化作業が求められている状況にある。②台湾の実務においては、詐欺罪における告知義務の有無を問題とする判決が少なからず存在する。告知義務の判断において重視される要素に着眼して分類するならば、台湾の裁判例は、以下の3つに分けられる。すなわち、(1)主に告知しなかった内容が「重要な事項」であるかに着目するもの、(2)主に相手方の情報へのアクセス可能性に着目するもの、そして、(3)主に相手方と行為者の力関係に着目するもの、という3つである。③(1)類型に属する台湾の裁判例と日本の裁判例との比較研究、及び、(2)(3)類型に属する台湾の裁判例と日本の学説との比較研究によって、告知義務の判断プロセスを精緻化することができると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詐欺罪における告知義務論の問題点及び課題を具体化した上で、交付申請書に記載した研究課題について着実に検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた作為義務者を特定する基準の具体化という課題の解決に向けて、文献資料を網羅的に収集し、理論的分析を加えることにする。本年度の研究を通じて、告知義務の判断プロセスを精緻化する際、台湾法との比較研究が有益であることが明らかになった。次年度は、今年度の研究成果を踏まえて、告知義務の判断構造を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究書の購入が遅れたために次年度使用額が生じた。次年度使用額は、令和元年請求額とあわせて、購入が遅れた研究書の購入に充てる計画である。
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