2020 Fiscal Year Research-status Report
若年成人の犯罪に対する少年法制の適用可能性に関する理論的研究
Project/Area Number |
17K13629
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
津田 雅也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80633643)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 少年の刑事事件 / 原則逆送 / 特定少年 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、アメリカにおける少年事件の移送・逆移送制度について文献調査を継続し、また、法制審議会(少年年齢・犯罪者処遇関係)において採択に至った諮問第103号に対する答申のうち、原則逆送対象事件の拡大について検討を加えた。前者については、前年度に公刊したメリーランド州の自動的移送制度に関する裁判例の収集・検討を行い、自動的移送対象事件のうち逆移送されたものについては、犯罪の重大性および社会の安全といった観点の他、少年の特性(とりわけ処遇可能性と前歴)が重視されていることを確認した。後者については、①法制審議会の答申が18歳及び19歳の者を、18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取り扱いを受けるという意味での中間層として捉えていること、②中間層に対する特例の目的が成長発達途上にあるという中間層の属性を踏まえつつ、改善更生・再犯防止という成人犯罪者の処遇目的をも考慮したものとなっていること、③答申における原則逆送の対象拡大そのものは②に照らして正当化できるものの、対象事件の拡大は②の観点から十分に説明できているとはいえず、より限定が必要であることを明らかにした。なお、答申を受けた立法過程においては、18歳及び19歳の者は「特定少年」として引き続き少年法の対象とされる一方で虞犯がその対象外とされ特定少年に対する処分は行為責任の範囲内で課されることとなったが、これによって、少年法の内部に、18歳未満と18歳及び19歳(中間層)という質的に異なる2つの年齢層が存在することになり、中間層の上限年齢が引き上げられた場合は、若年成人の犯罪に対する少年法の適用可能性が開かれたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法制審議会の諮問第103号に対する答申(令和2年10月29日)及び答申に至る審議過程を分析したことを通じて、若年成人の犯罪に対する少年法制の適用可能性がありうることが示唆され、研究の結論を得るための方向性が獲得できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度前期には、法制審議会の答申を受けて行われつつある立法過程の議論を踏まえた分析を行うほか、メリーランド州の自動的移送制度に関する論文の公刊を目指す。最終年度後期にかけて、若年成人の犯罪に対する少年法制の適用可能性について、その頃に成立していると考えられる少年法改正(特定少年=中間層の創設)についての評価・分析を踏まえつつ、一定の結論を得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
最終年度の研究課題遂行のため、少年法・刑事法関係の和書および洋書(アメリカ法ほか)を購入する必要が生じたため。
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Research Products
(2 results)