2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Theoretical Study on the Applicability of Juvenile Justice System to Crimes Committed by Young Adults
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17K13629
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
津田 雅也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80633643)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 少年の刑事事件 / 逆送 / 55条移送 / 少年法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度から継続して、アメリカにおける少年事件の逆移送の可否をめぐる裁判例について文献調査を行い、その結果を論文としてまとめた。その結果、メリーランド州における逆移送の5つの要件は、①直接は逆移送の可否に影響しないものと、②実質的に影響するものとに二分されることが明らかになった。①には年齢、少年の心身の状況、公共の安全要件が、②には処遇適合性、犯罪の性質要件が含まれる。実質的に逆移送の可否を左右している2つの要件のうち、犯罪の性質要件は逆移送を否定する方向に、処遇適合性は肯定する方向に働く。その理由は、自動的移送の対象事件は一定の重大犯罪であるから犯罪の性質は通常は少年司法システムでの処遇を不適とする方向に働くのに対して、非行歴・処遇歴などを踏まえて少年司法システムへの処遇に「適合」するか否かを判断する後者の要件においては少年にとって汲むべき事情(処遇に適当な施設の存否、過去の施設内処遇の有無、プロベーション中の態度、家族との関係等)が考慮されるからである。また、逆移送の可否を検討する際には、少年が当該犯罪を犯していることを前提にできるかという問題があるところ、メリーランド州の裁判例においては、少年が有罪であることを前提としてはならないものの、起訴事実の骨格が真実であることを前提に、少年の非行への関与の程度などを考慮に入れて、逆移送の可否が判断されていることが明らかになった。メリーランド州の裁判例を検討することにより、一定の犯罪を自動的に成人刑事司法システムに移送する制度においても、文字通り「自動的な」移送が行われているのではなく、逆移送に係る5要件を踏まえた実質的な検討がなされていることを明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)