2018 Fiscal Year Research-status Report
自招防衛論の再検討―要件・制限内容の具体化を目指して―
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17K13631
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂下 陽輔 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10735400)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 正当防衛 / 侵害回避義務 / 退避義務 / 自招侵害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、対抗行為に先行する事情が正当防衛・過剰防衛の成否に与える影響を具体的に解明することを目的とするものである。 本年度前半は、前年度に引き続き、大陸法の調査分析を行い、特にドイツにおける退避・侵害回避・公的救助要請義務に関する議論を中心に検討を深め、その成果を「防衛行為の相当性及び退避義務・侵害回避義務に関する考察(二)」法学82巻5号1頁において公表した。そこでは、これまで必ずしも明確でなかった防衛行為の相当性判断における比例性という観点の具体化を行い、その上で、退避・侵害回避・公的救助要請の問題が、比例性の問題の延長線上で把握されうる可能性があることを提示した。 本年度後半には、調査分析の対象をアメリカ法に広げた。模範刑法典の分析及びそれを基盤としつつも様々に変容している各州の法状況を調査し、特に退避義務を肯定する立場と否定する立場の分析に傾注した。アメリカ正当防衛法の調査・検討を行う先行研究は存在したものの、近時の退避義務を否定する法域の増加とそれを批判する学説上の知見を詳細に取り扱うものはなく、アメリカ正当防衛法に関する知見をアップデートしかつ深化させる意味でかかる調査・分析は意義があると思われる。 大陸法検討から得られた知見とアメリカ法検討から得られた暫定的知見を踏まえて、日本刑法学会関西部会冬期例会における共同研究報告及び仙台部会例会における個別研究を行い、そこで得られた更なる知見を踏まえて、現在論文の公表の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成30年度中に大陸法検討が一旦完了し、そこで得られた知見を論文として公刊することができた。 その上で、アメリカ法検討もおおむね順調に遂行できており、その上で研究会において報告する機会を得て、補充的検討が必要な個所を発見しつつ、全体を総括する方向性を見出すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、総括期として、これまでの外国法の研究成果を整理し、そこで得られた知見・示唆に基づいて、わが国の正当防衛解釈論を進展させることが目的である。 上述のように、大陸法に関する調査は完了しているので、アメリカ法に関する補充的な調査をしつつ、防衛行為の比例性の問題、退避・侵害回避・公的救助要請義務の問題のアメリカにおける扱われ方を整理し、その上で、大陸法・アメリカ法から得られた知見・示唆を踏まえて、わが国の正当等防衛解釈論に関する論文を公表する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた洋書類の出版年月日が遅れるなどしたため次年度使用額が生じた。 次年度にそれらの購入を行うために、また様々な研究会への参加のための旅費として使用することを予定している。
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