2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering of Exclusionary Rule of Illegally Obtained Evidence
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17K13633
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小浦 美保 岡山大学, 法務研究科, 准教授 (80547282)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 違法収集証拠排除法則 / 不公正証拠 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリスの証拠排除法則(不公正証拠排除)に関する先行研究では、同法則には違法捜査抑制の観点がないという知見を得、そのような排除法則において、手続の違法に対する評価、そして排除するか否かの判断がいかなる観点から行われているのかを検討してきた。そして、証拠排除の場面においては証拠の重要性や事件の重大性といった点を含めて、いわゆる相対的な排除が行われることはあるものの、違法の程度の評価においては、とりわけ被告人が被った具体的な不利益に着目されていることを明らかにした。 これらの知見を踏まえ、排除法則の適用は、証拠収集手続の違法に対する裁判所の評価を刑事裁判内部で伝える唯一の機会であるから、この宣言機能を強化する必要があるとの考えに至った。そして、わが国の判例(昭和53年決定)が示した基準の理解として、①「令状主義の精神を没却するような重大な違法」とは、利益衡量の要素をいれない、違法ないし権利侵害の実質が明らかとなるものでなければならず(絶対的評価)、これを以て、違法の宣言がなされると同時に、「重大な違法」が存在するという証拠排除の要件の一つが示されることになり、②「将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる」という点は、証拠排除に関わる利益を衡量し、証拠の排除を判断するための基準とみることになる(相対的評価)との主張を行ってきた。 そして、わが国における近時の裁判例の研究(拙稿「マンションのごみ集積場所に排出されたごみの領置」(東京高判平成30年9月5日)法セミ増刊速報判例解説26号197頁(2020年4月)等)を実施した。また、違法収集証拠排除法則の適用が問題となるわが国の裁判例の多くにおいて、被疑者の身体拘束の適法性が争われていることから、その判断基準に関する研究(拙稿「現行犯逮捕・準現行犯逮捕における明白性の判断資料」近刊)を展開するに至った。
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