2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13638
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西貝 吉晃 日本大学, 法学部, 講師 (50707776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 無権限アクセス / 情報セキュリティ / 刑法 / 機密性 / データ / 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 / サイバー犯罪 / CIA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,情報セキュリティ(CIA)の侵害の処罰可能性という観点から,もっとも大きなウェイトを占めていると思われるコンピュータ・データの無権限アクセス(取得)についての刑法の観点からの検討成果の報告を開始した。まずは,議論対象を情報・データ・存在形式という3つのレイヤーに分けて議論することにより,情報に関する他の犯罪類型との棲分けを可能にし,その上で,情報セキュリティの概念の刑法学への輸入を試みた。これにより刑法学において情報セキュリティの侵害に関する犯罪(CIA犯罪)を議論するための土壌が作られたことになる。CIA犯罪と営業秘密侵害罪等の情報保護のための規制との差異も浮き彫りになる。 CIA犯罪のうちの無権限アクセス罪は各国で様々な観点から規制が試みられているので,各国の最新の議論状況をなるべく広汎に見る必要がある。そのため,今年度において,既に相当程度の調査を行った英米独瑞西墺太利の5ヶ国の議論状況についての情報のアップデートを行った上で,さらに英米法圏の豪州の議論を一から調査して一定の知見を得た。これをまとめた成果の一部(英法及び米法の一部)を既に今年度,報告した。 なお,無権限アクセス罪の研究に関連し,個人のID(アイデンティティ)に関連する犯罪類型についても一定の調査を行った。こちらは,直ちに研究報告ができるまで十分な成果が得られていないが,無権限アクセス罪の罪質を考える際の一定の指針を得られたように思われる。なお,IDの保護(アイデンティティ)の保護は,民事法上の考え方も含めて議論を成熟させる必要があり得る論点だと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CIA犯罪のなかでもっとも大きなウェイトを占めている機密性侵害罪の研究を2018年度の中盤において終了させるということを目標としており,研究実施計画に沿った予定通りの進行である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に行った無権限アクセス罪の研究は,CIA犯罪のうち,Cを意味する機密性の侵害罪として構成した。その理由としては,I(完全性)やA(可用性)の侵害は別に規制すべきだという考えに基づいている。そうすると,IやAに関する犯罪を別途検討していく必要があり,この点について研究をすることも考えられる。コンピュータ・ウィルスに関する罪もこの領域に入る。もっとも,既に一定の規制効果を挙げている規定もあるので,現状を批判的にみることを前提とした研究という観点からは大きな論点になるかは不透明である。 むしろ,別に,AIと法という分野に関する議論が我が国においても活性化している今,AIと法という議論とサイバー犯罪との関係についての基礎的な理論を発信することも考えられる。この点については,無権限アクセス罪の研究から得られた一定のサイバー犯罪を検討する際の方法論を応用して,CIA犯罪に関わるとも思われるコンピュータ詐欺罪の議論をも調査して,AI時代のサイバー犯罪についての検討を行うことも考えている。CIA犯罪の一部たり得るコンピュータ詐欺罪に焦点を移して,サイバー犯罪全体の考え方を考えていく作業になる。
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Research Products
(2 results)