2018 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive Study on the Proceedings of Death Penalty and Life Imprisonment Cases
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17K13640
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
笹倉 香奈 甲南大学, 法学部, 教授 (00516982)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 死刑 / 終身刑 / 適正手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、当初の予定通り(1)アメリカにおける死刑事件の手続の研究と(2)終身刑をめぐる議論についての研究を行った。成果としては、以下を挙げることができる。 (1)アメリカで死刑事件について保障されている適正手続の内容を、公判前の段階から判決後の段階にいたるまで、総合的に確認することができた。 (2)上記の調査にあたっては、2019年3月にワシントン州の現地調査を行い、死刑事件に関わる弁護士から減軽証拠の調査のあり方について具体的に聞くことができた。 (3)アメリカにおける死刑事件の適正手続保障と、アメリカにおける現在の死刑制度の衰退との関係性を明らかにすることができた(2019年に「法律時報」に論文を公表)。 (4)アメリカにおいて、近年、絶対的終身刑(仮釈放のない終身刑、LWOP)のあり方に対する疑義が強まっており、終身刑からの開放を目指すプロジェクトが各地で開始されていること(たとえば、ワシントン州シアトルにおけるClemency Project、マサチューセッツ州ボストンにおけるEmancipation Initiativeなど)、その背景にあるLWOPの問題点などを調査・研究することができた。 以上の研究の過程で、2018年5月に開催された日本刑法学会において、ワークショップ「死刑事件と適正手続」のオーガナイザーを務めたほか、2018年6月に開催された「日米合同ティーチイン:日本国憲法と死刑執行」(主催:龍谷大学犯罪学研究センター)に協力し、2019年3月から『法律時報』で開始された連載「死刑事件と適正手続」に結びつけることができた。以上の他にも、大阪弁護士会における終身刑に関する勉強会(2018年11月)やアムネスティ大阪における講演会(2019年4月)において、研究の成果を研究者・弁護士、一般市民に発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、2018年度は、アメリカにおける議論状況を研究した上で①死刑手続が適正であると言えるための客観的な基準を提案し、②終身刑の手続の在り方についての研究を行うことを予定していた。 このうち、①については客観的な基準の提案まではいたらなかったが、アメリカにおけるこれまでの議論を俯瞰し、さらに判決後の段階の適正手続のあり方(執行前の異議申立手続、死刑確定者の精神疾患などの調査に関する議論)を行うことができ、また減軽調査の実際についても研究することができた。また、②については、アメリカにおける終身刑の手続をめぐる最新の議論を調査し、死刑事件と比して手続的保障がないことに関して、近年活発な議論や実践が行われ始めていることを調査し明らかにすることができた。また、以上の成果を積極的に学会や講演会等で発信することもできた。 以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2019年度は、当初の計画においては「それまでの年度において積み残した点を補完した上で、研究成果をまとめ、国内外の学会、弁護士会などにおいて報告をするとともに、大学紀要その他商業誌などで研究結果を公表する」ことを目標としていた。 特にイギリスをはじめとするヨーロッパにおける終身刑手続のあり方についての調査をはじめ、2019年度は積み残した課題について研究を継続し、公表等を行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)