2020 Fiscal Year Research-status Report
将来債権の差押えの許容性について―第三債務者の保護のあり方の再検討を通じての考察
Project/Area Number |
17K13641
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山木戸 勇一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20623052)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民事執行法 / 強制執行 / 債権執行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、将来債権の差押えについて、これを許容する際に必要となる解釈論や制度設計について考察することを目的としている。まず、将来債権の差押えの許容性に関しては、差押債権者と第三債務者との間の利益衡量から考察するという一般論が学説から主張されていたものの、その具体的な内容は十分に明らかにされているとはいえない状況にあった。もっとも、債権法改正においては、将来債権の譲渡に関する明文規定が設けられるに至っていることから(民法466条の6)、同規定の意義及び譲渡可能性と差押可能性の一致の必要性について検討を要するところである。また、将来預貯金の差押えの許容性に関しては、最高裁決定(最決平成24年7月24日判時2170号30頁)は、支店順位方式と同様に金融機関のシステムの整備状況に依拠した判断の枠組みによって結論を導いていた。もっとも、近年においては、金融機関のシステムの発達に伴って、支店順位方式を許容する下級審裁判例も再び現れ始めており、また、金融機関からの預貯金口座の情報取得の容易性も向上していることなどからすると、上記の最高裁決定の当時からは識別容易性をめぐる問題状況は変化しつつある。将来預貯金の差押えを許容することには、預貯金口座に振り込まれる継続的給付の差押えを可能とする意味もあることから、継続的給付が差押禁止債権である場合を想定すると実質的な妥当性の問題が生じ得ることになるが、将来預貯金の差押えに関しては、このような問題に着目すべき段階に移行しつつあるようにも思われる。本年度は、このような観点から、特に本研究と関連する債権法改正や民事執行法改正の事項について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題となっている問題領域に関係する事項の法改正等が行われたことによって、当初の見込みよりも検討すべき事項が増大したことから、最終的な研究成果のとりまとめにはなお時間を要する状況となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題となっている問題領域については、「5.研究実績の概要」で述べた通り、研究計画作成当時からは問題状況が変化しつつあるため、昨年度からこれに対応した論点整理を行っており、その分析を踏まえて最終的な研究成果をとりまとめることとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、所属研究機関および資料収集先の機関の行動指針レベルが厳格化されたことによって、研究打合せや資料収集のための出張の実施を延期せざるを得なくなったため。次年度は、最終的な研究成果のとりまとめに必要な書籍等の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)