2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Role of Minority Shareholders in Freezeout
Project/Area Number |
17K13646
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
寺前 慎太郎 信州大学, 学術研究院社会科学系, 講師 (00756471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民事法学 / 会社法 / 支配株主による締出し / 少数株主の過半数による承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、少数株主の締出しの場面を念頭において、対象会社の少数株主による事前の規律づけのあり方を探求するものである。最終年度の令和元年度においては、アメリカ・デラウェア州法を素材として、少数株主の過半数による承認(以下、「MOM条件」という)に関する研究を行った。なお、前年度に実施し、令和元年度の研究の基礎となった判例研究の成果は、金融・商事判例1570号に掲載された。 令和元年6月に、経済産業省から「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表され、わが国での議論状況に大きな変化が生じたため、比較法研究の前提として、同指針の分析を行った。同指針においては、MOM条件の定義や公正性担保措置として果たすべき機能などが明示された一方で、公正性担保措置として積極的に活用することが望ましいと位置づけられた特別委員会とは異なり、ほかの公正性担保措置を充実させることにより、MOM条件を活用しないという選択をする余地が広く残された。これは、買収者の持株割合が高い場合にMOM条件がもたらすM&Aの阻害効果を懸念したものであるが、利益相反性の高い買収を独立当事者間での買収と同視するためには、特別委員会の設置とMOM条件の両方を利用することが必要である、と主張していた有力説とは異なる立場が採用されたことがわかった。 デラウェア州においては、以前から、支配株主による締出しの場面における代表的な利益相反回避措置の1つとして、MOM条件が利用されてきたが、その評価は今なお流動的であることが明らかになった。理論的には、MOM条件に効率的な買収を阻害する効果があることは従来から主張されていたものの、有力な学説によれば、最近の事例を見ても、そのような効果が現実に生じているとはいえないとされる。もっとも、こうした指摘と同時に、MOM条件が追加的にもたらす便益に疑問が呈されており、今後の議論動向も注視する必要がある。
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Research Products
(1 results)