2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K13648
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村田 大樹 関西大学, 法学部, 教授 (10509227)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不当利得 / 侵害利得 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、他人の権利を侵害することによって生じた利得の行方を考える前提となる作業として、特に侵害利得に関して、その体系的位置づけを検討した。その暫定的な結論として、侵害利得を、権利消滅に対する代償請求に関するルール、果実や使用利益の帰属に関するルール、権利侵害に対する損害賠償に関するルールに、分化・解消すべきであるとする方向性を提唱した。しかし、これはいまだ仮説にとどまるものであった。 そこで2020年度は、以上の検討を踏まえてこれらの仮説をより丁寧に検証する予定であったが、侵害利得が不当利得法という制度の一部分として理解されている現在の法状況に鑑みると、侵害利得のみを分析することでこの問題を検討するのは全体像を見誤るおそれがある。そこで、不当利得法全体が民法体系とどのような関係に立つのかを検討するため、給付利得の検討を行なっている。とりわけ、平成29年の民法改正により新設された、法律行為の無効・取消しに基づく原状回復に関する規定(121条の2)が不当利得とどのような関係に立つのかについて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の対象が侵害利得のみでは収まらなくなったこと等により、当初の予定通りに進まなかった。もっとも、研究の公表に向けた作業は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的は、権利侵害によって生じた利益の分配法理の探究である。昨年度も述べたとおり、当初想定していたのは、いわゆる「利益の吐き出し」が問題となる場面を念頭に置き、被侵害者の損害を越える利益を、侵害者と被侵害者とでどのように分配するのかであった。しかし、権利侵害により利益が生じ、その利益(の全部または一部)を被侵害者に与えることを考えるには、既存の法制度、特に侵害利得の制度的意義や、不当利得法という制度の必要性自体を考えなければならないと考えている。最終年度は、給付利得(契約の清算)に関する近時の研究を素材として、不当利得法のあり方に対する見方を提唱できればと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、出張の計画がすべて実行できなくなったため。
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Research Products
(3 results)