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2017 Fiscal Year Research-status Report

Research on M&A contract provisions

Research Project

Project/Area Number 17K13651
Research InstitutionGakushuin University

Principal Investigator

星 明男  学習院大学, 国際社会科学部, 准教授 (10334294)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
KeywordsM&A契約 / 表明保証 / 補償
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、米国におけるM&A紛争事例の調査・研究を主に行った。そこで明らかになったことは、米国では、M&Aを巡る紛争において、契約による当事者間のリスク分配と契約法の原則との間に、緊張と相克が生じていることである。例えば、M&Aの交渉過程において、売主が買主に対して虚偽の情報を提供した場合、買主は、M&A契約上の表明保証違反に基づく補償請求と契約法上の詐欺に基づく損害賠償請求・契約取消しの両方を主張することができるが、両者の救済の内容・程度が異なっている(契約上の補償請求には、請求期限や金額の上限が定められることが多い)ため、詐欺に基づく請求を契約上の合意によってどこまで制限できるかという問題が顕在化している。具体的には、①買主が取引の過程で依拠した情報の範囲をM&A契約によって制限することは可能かという問題と②買主が求めることのできる救済の内容をM&A契約によって制限することは可能かという問題が生じている。上記①については、米国の契約実務では、売主がM&A契約書上で明示に行った表明以外の売主側の表明に基づく買主からの請求を排除したい場合には、契約書中に完全合意条項と依拠排除条項を規定するが、これらの条項の有効性に関する裁判所の判断は、州によって異なり、錯綜している。上記②については、米国の契約実務では、詐欺に基づく損害賠償請求や契約取消しに伴う不当利得返還請求にも契約上の期限や金額の制限を及ぼしたい場合には、排他的救済条項を規定するが、少なくともデラウェア州では、そのような制限は公序良俗に反するとの立場がとられている。日本でも、M&Aを巡る紛争において詐欺取消しが主張された事例が現れており(東京地判平成29年3月9日金判1522号46頁)、今後、M&A契約による当事者間のリスク分配と民法の原則との間の相克が現実の問題となる可能性は高いと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究計画では、平成29年度に、米国におけるM&A契約実務(紛争事例の研究を含む)の調査を終える予定であったが、まだ終了していない。その原因として、次の2点が挙げられる。第一に、本研究課題に費やす時間が予定より少なくなってしまったことである。英語で行う講義(Law and Economics)の準備に想定より大幅に多くの時間を要したほか、本研究に必要な文献の入手に想定外のトラブルがあった(米国のAmazon.comの誤配送による返品・交換の処理に1か月近くの時間がかかった)。第二に、研究対象の更なる広がりである。「研究実績の概要」で述べた、契約による当事者間のリスク分配と契約法の原則との間の緊張・相克のほか、英米法の契約解釈原則と大陸法の契約解釈原則の違いが、日本の裁判所によるM&A契約の解釈に困難をもたらしている大きな要因である可能性があることがわかった。そのため、米国のM&A契約実務の調査だけでなく、主に欧州で行われている比較契約法の研究成果を参照する必要が生じた。

Strategy for Future Research Activity

平成30年度は、出来るだけ早い時期に米国におけるM&A契約実務・紛争事例の調査を終えたい。上記のように、英米法の契約解釈原則と大陸法の契約解釈原則の違いをより深く検討する必要が生じているため、研究計画に記載した経済分析モデルの批判的検討を行う前に、欧州での比較契約法の議論状況を調査・研究する。そのため、経済分析モデルの批判的検討に取り掛かる時期が研究計画より大分遅れる見込みであるが、英米法の契約解釈原則と大陸法の契約解釈原則の違いの研究は、それ自体として、日本における契約ドラフティングの実務と裁判所の契約解釈との間の乖離を埋めるという、本研究課題の目的に資するものである。

Causes of Carryover

次年度使用額の大部分は、平成29年度中に出版予定だった書籍の出版が遅れたため、発注済みであるが未納入であることによるものである。残額は、主として、書籍の購入と学会参加の旅費に充てる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017

All Journal Article (2 results)

  • [Journal Article] Doing Deals in Japan Revisited: An Updated Introductory Guide for U.S. Practitioners2017

    • Author(s)
      Stephen D. Bohrer & Akio Hoshi
    • Journal Title

      The M&A Lawyer

      Volume: 21 Pages: 19-36

  • [Journal Article] 現代訴訟の論点と法理論の検討第2回 表明保証条項違反を理由とする損害賠償請求訴訟2017

    • Author(s)
      道垣内弘人=山本和彦=小粥太郎=星明男=岸日出夫=山田真紀=朝倉佳秀=武部知子
    • Journal Title

      論究ジュリスト

      Volume: 22 Pages: 156-179

URL: 

Published: 2018-12-17  

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