2017 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける保険契約の法的構造―保険者の債務に着目して―
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17K13653
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松田 真治 帝京大学, 法学部, 助教 (60759554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保険法 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、フランスにおける保険契約の定義に関する学説状況の解明を行った。日本の保険法2条1号とは対照的に、フランス保険法典には、保険契約の定義に関する条文規定が存在しない。そこで、フランスでは、学説によって定義がなされていた。本年度は、とくに次のことを行った。 第1に、近年のLuc Mayauxの定義に関する検討結果を日本保険学会の学会誌である「保険学雑誌」で公表した。Mayauxによる保険契約の定義の特徴は、①リスクの分散という技術について言及していない点、②保険契約の相手方の表示方法を明確にしている点(従来は、被保険者と保険契約者の双方を意味する用語が用いられていたため、不明確となっていた。)、③保険契約の主要な債務として、保障を強調している点にある。特徴③について、Mayauxは、保険者が「保障債務」と「支払債務」を負っていると理解している。 第2に、Mayaux以前の学説状況について調査を行い、それに関し、日本保険学会において報告を行った。そこでは、主に、①フランスにおいては、保険契約の定義について規定することを立法段階で断念したこと(しかし、保険契約と類似契約の区別をする必要があるので、学説上、保険契約の定義が試みられたこと)、②かつて保険と保険契約はあまり区別されていなかったこと、③1990年代にHubert Groutelが保険取引と保険契約を区別したこと、④Mayauxは、保険技術が契約外在的な要素であると捉えていること(上記Mayauxの定義の特徴①に関連)、を示した。 また、日本法も含め、保険法の各論的問題に関する文献の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、①保険契約の定義に関する学説状況を解明すること、②民法学説と保険法学説の関連性を見出し、学説の系譜を解明すること、であった。本年度は、①及び②の概観を学会誌に公表することができ、①に関しては、学会で公表することができた。もっとも、後者に関しては、公表媒体の確保の問題もあり、文献としての公表が遅れている。しかし、内容面においては、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、保険契約の定義に関する学説状況の検討に関して、大学の紀要に掲載する。次に、研究計画通り、民法学説と保険法学説の関係について、より検討を行い、これも大学の紀要に掲載する。併せて、我が国の保険法の諸問題の検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の研究の性質上、古い文献が多く、書籍の購入ではなく複写が多かったため、物品購入費の使用が予想以上に少なくなった。次年度には、紀要での論文公表を行うため、その抜刷購入費等に充てる。
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