2018 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける保険契約の法的構造―保険者の債務に着目して―
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17K13653
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松田 真治 帝京大学, 法学部, 講師 (60759554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保険法 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、フランスにおける保険者の債務について、抽象的な議論よりも、条文に関連する議論を重視して検討を行った。 第1に、平成30年10月27日・28日に日本大学で開催された日本保険学会全国大会において、「フランスにおける巨大災害に関する保険について」と題するポスター報告を行った。これは、本研究との関連でいえば、危険負担給付(あるいは条件付き支払給付)が保険者に強制される場面である(強制加入ではなく、関連保険契約への強制附帯である)。契約自由を制限するこの制度が認められる思想的背景などが今後の検討課題となる。 第2に、平成31年3月15日に早稲田大学で開催された日本保険学会関東部会において、「フランス債務法改正と保険契約の法的性質論」と題する研究報告を行った。「保険契約は、射倖契約である」、これはフランスでも日本でも言われることである。フランスにおいては、民法典1964条において、保険契約が射倖契約の一つとして例示されていた。このことから、ある意味、保険契約が射倖契約であることは自明であったともいえる(日本にはこのような規定はない)。ところが、2016年の債務法改正の結果、同条が削除され、少なくとも条文上は、「保険契約は、射倖契約である」ということが自明ではなくなった。改正前においても、保険者の債務を保障債務と支払債務に区別する二元論の立場から、「保険契約は、射倖契約である」ということに対しては、疑問が呈されていたところである。改正後の条文の下でも、保険契約が射倖契約であることを維持する見解と、先の二元論から、射倖契約は実定的かつ射倖的な契約と解することになるとする見解がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は、やや遅れている。理由は以下のとおりである。 第1に、上記のような報告は行ったものの、論文という形では公表できていないことである。これは、研究の公表という側面での遅れである。 第2に、研究の内容面についてである。当初の予定では、本年度は民法学に関する検討を行う予定であったが、2016年改正後のフランス債務法の検討を行う必要が生じた結果、範囲が当初の予定よりも膨大になった。また、日仏比較法を最終的な目標としている関係で、日本の各論的問題の検討に時間を費やしてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、本年度の日本保険学会関東部会での報告について、保険学雑誌に投稿する。 第2に、保険者の債務に関する検討をまとめるような論文を執筆する。 第3に、日仏比較法を行う関係上、日本法に関する諸問題についての検討を行う(判例の検討を含む)。
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Causes of Carryover |
本年度は、学会や研究会が東京で行われることが多かったため、旅費が少なく済んだ。 次年度は、名古屋の名城大学に移籍するため、東京や大阪での学会・研究会のための旅費が必要となる。これに利用したいと考えている。
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