2019 Fiscal Year Annual Research Report
Legal Structure of the Insurance Contract in France
Project/Area Number |
17K13653
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
松田 真治 名城大学, 法学部, 准教授 (60759554)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 保険法 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、前年度に引き続き、フランスにおける保険者の債務について、フランスの2016年債務法改正に関連した議論を中心に検討を行った。 平成31年3月に日本保険学会関東部会で「フランス債務法改正と保険契約の法的性質論」と題する研究報告を行ったが、これの論文化作業である。もっとも、この論文化に際して参照した論文の精読が中心的課題となった(後述)。そのため、上記報告の年度内での公表を見送る結果となった。 本年度、注力して検討を行ったのが、Mayauxの「保険契約における対価」という論文である。上記の学会報告は、射倖契約性に関する議論であるが、Mayauxの上記論文は、保険契約の射倖契約性に懐疑的な姿勢を示す論文である。もっとも、この懐疑的な姿勢はMayauxにとって新しいことではなく、改正民法下での指摘がなされているのが、当該論文である。上記論文は、射倖契約性をメインに扱ったものではなく、広く保険契約における債務の均衡を扱った論文である。許可を得た翻訳作業の準備として、上記論文の要点の紹介および日本におけるフランス法研究との接合を試みたものが、拙稿「Mayauxの『保険契約における対価』に関する覚書」名城法学69巻4号109頁以下である。Mayaux論文では、改正法下において、コーズ(cause)の代替となりうる条文のうち、有償契約における対価の名目性・僅少性を問題とする民法典1169条、本質的債務からその実質を奪う条項を書かれなかったものとみなす民法典1170条、給付の品質が契約によって確定的でない場合に、債務者に対し、当事者の正当な期待に適合する品質の給付を義務付ける民法典1166条の保険契約への適用可能性が検討されている。保険者の債務について、保障債務と支払債務に分けるMayauxの見解においては、上記の問題は、保障債務の内容の不均衡の問題と整理されることになろう。
|