2017 Fiscal Year Research-status Report
A General Study on the Doctrine of Unconscionability in America
Project/Area Number |
17K13660
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
柳 景子 福岡大学, 法学部, 講師 (60709806)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アメリカ / 契約法 / 非良心性 / 交渉力 / 民法 / 不当条項規制 / 消費者契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究課題について博士号申請論文にまとめた。同論文では、アメリカの非良心性法理に関する判例や学説について、できるだけ総合的かつ多角的に紹介・検討し、同法理の本質や運用の実態に迫ることを目指した。 非良心性法理は、本来的には、司法(裁判所)が事後的に契約内容を規制する法理である。しかし、同法理の適用には、解釈上、契約内容そのものの不当性(実体的非良心性)のみならず、契約締結過程に関する不当性(手続的非良心性)が原則として必ず要求されてきた。このように、非良心性法理は、契約内容の規制法理でありながら、契約締結過程の規制にも関わる法理であるという点に特徴がある。そして、契約締結過程の規制を担う手続的非良心性とは、伝統的に、inequality of bargaining power がその主要要素であると考えられてきた。 以上については、以前の研究成果でも明らかにしてきたが、平成29年度の研究成果(論文)では、(1) 以上をより詳細な文献や判例を用いて再び論じ、(2) inequality of bargaining power とは何かについて、アメリカでの議論を詳細に紹介・検討を行った。その上で、(3) アメリカで議論されているbargaining power とは、わが国で一般に「交渉力」と訳される概念ではあるが、わが国で一般的に認識されている以上に多義的な概念であることを指摘した。すなわち、bargaining power とは、実際の行為としてネゴシエートする能力(狭義の交渉力)のみならず、消費者と事業者、労働者と雇用者など、社会構造に由来する「力関係」を意味する場合がある(広義の交渉力)。以上を踏まえ、今後の課題として、わが国の裁判所が、契約の規制根拠として「交渉力の格差」に言及する際、どの意味での交渉力に着目しているのかを検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、研究課題について(1)各種研究会での報告・発表を行った上で、(2)研究成果を博士号申請論文としてまとめるというものであった。結果は、(1)を行わずに、(2)のみ達成した。当初の計画では、研究会での報告・発表を通して、外部から研究課題に対する示唆を得て、その上で論文執筆を行うと考えていた。実際には、当初の計画とは異なり、(2)の方を先に終えたため、今年度は、(2)に基づいて(1)を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 博士号取得申請手続上の口頭試問などを通して得た助言や新たな知見を元に、申請論文を加筆修正する(なお、申請の結果は2018年9月半ば頃判明する。)。 2. 1.と同時進行で、同論文で明らかになった課題や問題点について新たな論文としてまとめることを目指す。 3. 1.及び2.を著書としてまとめる。 2.については、具体的には、日本法の現状について調査・検討を行う。すなわち、申請論文において、わが国では契約内容の司法上の事後的な規制を行う際に、交渉力の不均衡や格差という要素をどのように考慮に入れるかという問題について、判例及び日本の学説の調査・検討が不十分であったため、これを中心に行う。
|
Research Products
(1 results)