2018 Fiscal Year Annual Research Report
A General Study on the Doctrine of Unconscionability in America
Project/Area Number |
17K13660
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
柳 景子 福岡大学, 法学部, 講師 (60709806)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 非良心性法理 / 交渉力 / 契約 / 民法 / アメリカ契約法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、学位論文(2018年9月博士(法学)取得)を基にさらに2点の論文を執筆した。すなわち、「現代におけるアメリカの非良心性法理の展開」福岡大学法学論叢63巻4号931頁(2019)、「アメリカにおけるバーゲニング・パワー(交渉力)概念の議論に関する一考察」福岡大学法学論叢64巻1号(2019)掲載予定(印刷中)である。 上記の論文執筆にあたり、次のような知見を得た。第1に、アメリカの非良心性法理は、その曖昧さゆえにアメリカ契約法の中でも特に活発に議論されてきたテーマであるが、非良心性法理の存在意義や機能に対して懐疑的な学説の登場や、それに伴い議論が低調となった時期等を経て、現在もなお、実際に裁判において適用・運用がなされている。消費者保護等、一般的に同法理に期待される機能を十分に果たしているとはいえないものの、同法理は、各時代の契約に関する新たな不公平・不平等の問題に対応するために運用されてきた事実があり、この点に同法理の存在意義を認めることができるのではないか。 第2に、交渉力不均衡に関して、一般的に我が国では交渉力と和訳されるアメリカのbargaining power は、実際には多義的な概念であり、主に、(i) 「交渉力」という訳語から想起されるような、実際の当事者のかけ引き能力、(ii) より一般的・抽象的な意味での、力関係・当事者間の関係性、及び、(iii) 個別具体的な事例に即して実質的に評価した力関係・当事者間の関係性、という3種類に分けることができるものと思われる。アメリカでは、(ii) の意味で用いられることが多いものの、これにはステレオタイプ化するとの批判もあり、(iii) が望ましいとする学説が存在する。 今後は、この分類を元に我が国の判例・学説における「交渉力」概念について改めて検討を行いたい。
|
Research Products
(2 results)