2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13666
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 裕一 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (50647039)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 規制空間 / 規制機関 / 規制監督機関 / 公益性 / 多層的規制 / 内閣主導 / 司令塔 / 実験的規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1) 多層的規制システムの事例研究、(2) 各層間の関係性分析、(3) 規制の「公益性」実現のためのシステム検討、の3観点から研究に取り組んだ。 (1) 日本海事協会が旗国・主務官庁からの委任を受け、国際条約に基づき船舶検査を代行するという点において多層的な船舶規制に関しては、①IMOが近年、旗国と代行機関の責任を明確化していること、②船級協会間の国際連携が充実してきており、国際船級協会連合がIMOの有力な技術アドバイザー組織になっていること、③不確実性の高いPSCについて、寄港国間での情報や認識の共有が益々重要になっていること等が明らかになった。また、地方創生に見る中央・地方政府間の多層性についても検討した(この成果は『年報 公共政策学』で発表)。 (2) 内閣主導による人口問題対策である地方創生に見出される、企画・事業各部局間に働く斥力の原因について、①内閣官僚と現場官僚の専門性、②「司令塔」と利害関係者の直接的接触、③企画調整に絶えず効く財政健全化圧力に注目して分析した。その上で、地方創生についてよく指摘される様々な問題点が、1990年代以降の内閣機能強化、中央省庁再編、分権改革等によって生じていることを論じた(この成果は『季刊 行政管理研究』で発表)。 (3) 規制の「公益性」を高めるための「実験」と「評価」のシステムについて検討した。アメリカの医薬品治験を念頭に置いた理論研究を参考にしながら、我が国の国家戦略特区制度を素材として「実験的規制」の可能性を探った。国家戦略特区基本方針では、定期的に定量的かつ具体的な評価を行うことが謳われているが、特区自体に実験作法への配慮はあまりなく、評価実施主体(区域会議)の独立性や実験・評価結果の反映についても、上記理論研究の指摘に照らして改善の余地があることが明らかになった(この成果は日本評価学会で発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4か年計画の本研究では、①規制機関の多層性と規制の公益性に関する国内外事例調査、②規制執行過程研究との連結、③各国規制監督機関の比較研究を行い、政治的・技術的正当性の観点でその機能条件を抽出した上で、「公益」に資する多層的規制モデルを構築することを目的としている。 今年度は、主として日本国内で、多層的な規制(監督)機関の制度・組織・活動の実態を調査すること、規制の公益性の観点を入れつつ、実態調査の成果を公表することを計画していたところ、概ね当初の予定通り、(1) 多層的規制システムの事例研究、(2) 各層間の関係性分析、(3) 政策の「公益性」実現のためのシステム検討、の3観点から研究に取り組むことができた。 もっとも、事例が主として船舶と地方創生の2国内事例に止まったこと、次年度以降の海外調査や国際比較に向けた基盤整備に十分なエフォートが割けなかったこと、成果を発表した研究の内容が未成熟で、理論的にさらに深掘りする余地があることなど課題が残されており、これらには今後取り組む。 以上を総合し、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で残された上記課題に取り組みながら、次年度も引き続き、多層的な規制(監督)機関の制度・組織・活動の実態調査と、規制の公益性の観点を入れた実態調査の成果公表に取り組む。 さらに、当初の計画通り、他国・国際規制(監督)機関研究の論点と調査項目を整理した上で、実際に海外に赴き、国際的な規制(監督)機関の制度・組織・活動について調査を行う。 具体例について、公開・非公開文書の収集・調査、関係者へのヒアリング、各地で開催される会議等への参加・傍聴といった方法によって、とりわけそうした規制(監督)機関が専門性を有しつつ特殊利益を主張しがちな国内外の業界団体とどのように接し一定の政策判断を下すのかという観点から実態を調査する。その際、基本的には1次資料や当事者へのヒアリングを基にした実態調査とする予定だが、公開資料や国際組織論・国際行政論の専門家に多面的にアクセスすることもあり得る。またこの間、適宜、日本の規制システムとの比較も行い研究課題の整理に努める。
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Causes of Carryover |
(理由)年度内に行う予定だった海外調査が、諸事情により年度明け以降に先延ばしになったため。 (使用計画)年度明け以降に実施する予定の海外調査の費用に充てる。
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Research Products
(14 results)