2017 Fiscal Year Research-status Report
麻薬紛争下の集合行為:現代メキシコにおける自警団運動の比較分析
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17K13667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
馬場 香織 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (10725477)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メキシコ / 麻薬紛争 / 自警団 / 社会運動 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目は、(1)メキシコにおける麻薬密輸と全国的な治安状況の推移を概観したうえで、地方の動向と暴力のタイプへの着目から、暴力の推移と犯罪の性格の変容を明らかにすることと、(2)ミチョアカン州で出現した自警団が大きな「成果」をおさめた要因を解明することを目標に、研究を行いました。 具体的に(1)については、2007年から2011年にかけての暴力の激化が2012年から2014年にかけていったん沈静化傾向にあった後、2015年から再燃傾向にあること、そして近年の暴力再燃もまた、麻薬を含む組織犯罪と密接にかかわっており、主要な麻薬犯罪組織が弱体化する一方、それらから分裂・派生した組織も含めて中小の犯罪集団が乱立する状況が、近年の暴力再燃に影響を与えている可能性を指摘しました。 (2)については、麻薬紛争が激化し、市民に対する暴力被害が深刻化するなか登場した自警団に着目し、その運動が犯罪組織のコミュニティからの一掃といった成果をおさめるための条件として、運動の資源と連邦政府の戦略に着目する必要を指摘しました。また、ミチョアカン州の事例から、成果の要因が時期によって異なる可能性について検討しました。 それぞれの研究成果は、(1)「ヘゲモニーの衰退と拡散する暴力ーーメキシコ麻薬紛争の新局面」(『ラテンアメリカレポート』34 (2)、2018年1月刊行)と、(2)「麻薬紛争下の市民の蜂起ーミチョアカン自警団運動とその成果に関する考察ー」(未刊行)としてそれぞれ論文にまとめました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2本の論文を執筆したほか、2つの国内の研究会で成果を報告し、2つの一般向け講演会で成果の発表を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集が難しいテーマではありますが、メキシコの研究者と連携することで自警団運動の比較分析を行う上で必要なデータの収集に努めます。
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Causes of Carryover |
海外調査渡航費を独立基盤形成支援予算から支出できたため。翌年度の使用は、海外渡航調査費にあてます。
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