2019 Fiscal Year Annual Research Report
Self-Defense Forces of the Mexican Drug War: A Comparative Analysis
Project/Area Number |
17K13667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
馬場 香織 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (10725477)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メキシコ政治 / 比較政治 / 麻薬紛争 / 自警団運動 / 暴力と政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人々の暮らしに大きな負の影響を与えているメキシコの麻薬紛争に着目し、暴力が人々の日々の生活を脅かすなかで、非常にハイリスクな集合行為である自警団運動が発生、拡大する条件についての分析を進めた。メキシコでは2006年末以降、麻薬密輸組織に対する徹底した強硬策が実施され、犯罪組織の大物幹部の逮捕など一定の成果をあげたが、幹部を失った組織内での後継者争い、組織の分裂、外部から侵入してきた別の組織との縄張り争いの激化、中小のギャング集団の乱立、そして犯罪の多様化を招き、市民の被害を拡大させる結果ともなった。殺人事件の被害者は全国で年間2万人を超え、誘拐や恐喝、その他の犯罪を含めると、多くの市民が日常的に治安の問題を懸念しながら生活している。他方、暴力の状況や傾向、犯罪組織に対抗する自警団の組織化状況などについて見ると、地域差が大きいことも確認した。 以上についての最終成果は、馬場「麻薬紛争下の市民の蜂起:ミチョアカン自警団運動の事例」星野妙子編『メキシコの21世紀』アジア経済研究所 (2019)として公刊した。この論稿では、麻薬紛争の下、とりわけ貧困状況の厳しい辺境地域において、市民に対する暴力被害が急激に高まり、腐敗した地方当局に代わって市民の保護を担いうる公的機関も存在しないなかで、自警団運動が市民にとって現実的な選択肢となっていった過程を論じた。さらにミチョアカン自警団の場合、当初からある程度組織構造が存在していたことや地元コミュニティの連tない、高い戦闘能力、そしてフレーミングの効果によって、大規模な運動に発展していったことを明らかにした。
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