2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative research on party system realignment and its policy consequences: From the perspective of comparative welfare states
Project/Area Number |
17K13674
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
稗田 健志 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (30582598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 比較政治学 / 比較福祉国家論 / 政党システム論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サービス経済化・価値観の変容・脱国民国家化およびその反動によって政治的対立軸がどのように変化し、その変化が福祉国家のあり方にどのような影響を与えてきたのかを探ることにある。ここで焦点を当てるのは、①有権者レベルでの政策選好および対立軸の変化、②そうした有権者の政策選好を実際の政策へと変換する政党システムレベルの政策対立軸、③そして政策対立軸の変化を受けた福祉国家の再編成である。この作業を通じて、有権者および政党レベルでの対立軸の変化と競争空間の変容を理論化してきた政党システム論の研究成果を比較福祉国家研究へと架橋し、近年の福祉国家再編成を規定してきた要因を明らかにすることを目的としている。 2019年度は、先進工業諸国における政党間競争が物質的利益の分配・再分配の規模を問う左右一次元的対立から、ナショナリズムや環境保護、ジェンダー、性規範といった脱物質的価値をめぐって対立する文化的対立軸をも含む二次元的対立へと再編されていることを、西ヨーロッパの先進諸国における左右のポピュリスト急進政党の台頭を支える有権者の存在から探った。 分析結果は、経済的左右次元はポピュリスト急進右派政党の支持にはほとんど影響せず、文化的対立軸上の排外主義に位置する有権者が強くポピュリスト急進右派政党を支持していることを示した。一方、ポピュリスト急進左派政党に関していえば、経済的左右次元では左派、かつ文化的対立次元では包摂的な有権者が支持していることが分かった。加えて、そうした文化的対立軸上の権威主義・排外主義の立場は職業階層上の低位に位置するブルーカラー製造業労働者が強くそうした価値観を持っており、経済的次元では左派かつ文化的次元では包摂的な選好は職業階層上の上位に位置する社会文化専門職が抱いていることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクロレベルの世論調査データである「欧州社会調査 (European Social Survey)」の第4波から第8波までをプールしたデータセットを構築し、職業階層の垂直的次元と水平的次元という二つの次元から分類した職業階層が、有権者の①福祉国家による再分配、②伝統的社会規範への服従、③移民への態度、といったイデオロギー的・態度的要因の形成を通じて、どのようにして政党支持に影響を与えているのかを分析した。 その結果、ポピュリスト急進右派政党については職業階層上の低位の位置が文化的対立軸上の権威主義・排外主義的選好に変換されることでそうした政党への支持につながっており、政策選好的には凝集的な支持基盤を有していることが分かった。他方、ポピュリスト急進左派政党に関していえば、職業階層上の低位が経済的左右次元における左派的選好に変換されこの政党群の支持につながる一方、職業階層上の上位の位置が文化的対立軸上のリバタリアン・包摂主義的選好に変換されることでこの政党群の支持にもつながっていることを明らかにした。つまり、ポピュリスト急進左派政党の支持基盤は階層的には多様であり、政策選好上も再分配を求める立場と文化次元でのリバタリアン的政策を求める立場とで潜在的な亀裂が存在し、比較の上では脆弱である可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、ミクロレベルの国際世論調査データを用い、有権者の職業階層がイデオロギー的・態度的要因にどのように影響し、それがどのようにして政党支持に結びついているのかといった課題に対する分析を引き続き進める。また、その際に、各国の政党の多元化した政党システム上の位置づけを客観的に測定し、その政策的位置取りが有権者のイデオロギーや態度と政党支持との間をどのように媒介しているのか分析する。また、二次元政党競争空間上の政党の政策位置が福祉・労働政策に与える影響の分析も引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
採択されることを予定していた国際学会で抄録が採択されず、国際学会で研究交流する経費に当研究費を充てることできなかった。今年度は早い段階でデータ解析に使用するコンピューターやソフトウェアを購入する予定なので、そちらに残額は使用するつもりである。
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