2020 Fiscal Year Research-status Report
Comparative research on party system realignment and its policy consequences: From the perspective of comparative welfare states
Project/Area Number |
17K13674
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
稗田 健志 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (30582598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 比較政治学 / 比較福祉国家論 / 政党システム論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サービス経済化・価値観の変容・脱国民国家化およびその反動によって政治的対立軸がどのように変化し、その変化が福祉国家のあり方にどのような影響を与えてきたのかを探ることにある。ここで焦点を当てるのは、①有権者レベルでの政策選好および対立軸の変化、②そうした有権者の政策選好を実際の政策へと変換する政党システムレベルの政策対立軸、③そして政策対立軸の変化を受けた福祉国家の再編成である。この作業を通じて、有権者および政党レベルでの対立軸の変化と競争空間の変容を理論化してきた政党システム論の研究成果を比較福祉国家研究へと架橋し、近年の福祉国家再編成を規定してきた要因を明らかにすることを目的としている。 2020年度は、これまでの有権者および政党レベルにおける、物質的利益の分配・再分配の規模をめぐる既存の経済的左右軸中心の一次元的対立軸から、ナショナリズムや環境保護、ジェンダー、性規範といった脱物質的価値をめぐって対立する文化的対立軸を含んだ二次元空間への変容を踏まえ、それが福祉国家の再編成に与える影響を探った。 具体的には、1980年代以降の先進工業諸国における積極的労働市場政策を対象とした分析を行い、若者・女性・移民が中心となる労働市場の「アウトサイダー」が主対象となる積極的労働市場政策では、経済的左右軸よりもむしろ社会文化的対立軸のほうが政策アウトプットに影響することを示した。すなわち、性別役割分業や自国民中心主義となる権威主義的立場よりも、就労による個人の自立・自律に親和的なリバタリアン的立場に立つ政党が政権に就くと、積極的労働市場政策が拡大しやすいということを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二次元競争空間における政党の政策的位置取りが福祉国家再編成に与える影響を実証的に探るために、先進工業21カ国の1985年から2017年にわたって、内閣ごとに積極的労働市場政策向け公的支出、各種社会経済変数、および政治変数をプールしたデータセットを作成し、回帰分析を行った。分析結果は、内閣の経済的左右軸上の政策位置は主要な政策決定要因ではなく、むしろ社会文化的対立軸上のリバタリアンの位置が重要であることが分かった。また、積極的労働市場政策を①就労支援施策、②職業訓練、③直接雇用創出の三つに下位分類して分析すると、左派リバタリアン政権は③直接雇用創出を拡大するものの①②には影響せず、むしろ中道~右派リバタリアン政権で①就労支援施策と②職業訓練が拡大していることも明らかにした。 こうした分析結果を国際査読誌に投稿したものの、新型コロナウイルス蔓延による世界的パンデミックの影響で査読結果の開示が遅れ、国際査読誌での研究成果の公刊にはいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる2021年度は、国際査読誌での研究成果の公刊を目標とする。先進工業諸国における政党システム再編成と積極的労働市場政策との関係を分析した研究は、パンデミックの影響で査読レポートの受け取りが遅れたが、現段階では査読結果に基づき改稿中である。また、ミクロレベルの国際世論調査データを用い、有権者の職業階層がイデオロギー的・態度的要因にどのように影響し、それがどのようにして政党支持に結びついているのかといった課題に対する分析も引き続き進める。
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Causes of Carryover |
採択されることを予定していた国際学会が対面で開催されず、国際学会で研究交流する経費に当研究費を充てることできなかった。データ解析に使用するコンピューターやソフトウェアを購入する予定なので、そちらに残額は使用するつもりである。
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