2017 Fiscal Year Research-status Report
欧州における極右政党支持・排外主義と選挙動員の実証研究
Project/Area Number |
17K13676
|
Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
中井 遼 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (10546328)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヨーロッパ / 移民 / 難民 / 計量分析 / 欧州懐疑主義 / ナショナリズム / 反移民 / 排外主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,ヨーロッパ諸国を主たる対象として,いわゆる極右政党の支持が拡大している要因の実証的妥当性を検証し,またそれらの政治勢力が展開する動員が世論にどのような影響を与えているか明らかにすることを目的としている。 事業初年度にあたる29年度は,両者を結節する現象として見られがちな,反難民・反移民態度の研究に取り組んだ。反移民態度規定要因の実証研究については膨大な先行研究があるが,本研究はこれに知見を加味することを企図して①対難民態度の場合の分析結果②移民の人種的異同を考慮に入れた場合の分析結果を検討した。手法としては,とくにEuropean Social Survey等の個票計量分析を中心とし,適宜研究も行った。 得られた暫定的結論は次の通りである。(1)反移民態度先行研究と同様に,難民に対する否定的な態度も,個々人の経済的地位や属性が与える統計的影響は明確ではなく,政治的選好や文化的認識の方が実証的には意味ある影響を与えていた。エピソードベースで語られる,「貧しい者や学のない者たちが難民受け入れに反対している」といった言説は,実証的には根拠がなく,むしろ社会経済的地位の高い回答者の中にも十分に反難民感情は浸透している。本研究の分析結果からは欧州懐疑感情が重大な影響を及ぼしていた。(2)他方で,移民集団の人種的異同を区別した場合には,個々人の経済的地位・属性が反移民態度を規定する場合も見いだされた。世論調査回答者に対して,異なる人種としての移民(欧州域外移民)を想起させる質問の場合,もっぱら政治的・文化的態度が統計的有意性をもつ独立変数であった一方,同じ人種としての移民(欧州域内移民)を想起させた質問に対しては経済地位・属性要因が効果を有す場合があった。 30年度以降はこのような世論や感情のインタラクションに政党(支持)がどのように関与しているか分析を深める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,初年度には予備分析をいくつか実施するものと想定していたところ,当初計画以上に早期に論文化に結び付き,全体の研究計画のなかでよいスタートを切れたと解される。
|
Strategy for Future Research Activity |
近年の欧州における極右政党支持や排外主義を分析するにあたり,避けられないテーマとしての反移民感情・反難民感情については一定のまとまった分析結果を得ることができたため,今後はこれらの感情や因果関係の中に,前述の政党支持態度などがいかにかかわっているのか(あるいはかかわっておらず独立に存在するのか),分析を進めていく。 具体的には反移民感情・反難民感情は,極右政党支持の独立変数なのかあるいは従属変数なのか,または相互に直接には因果関係にない態度であるのか,実証的に解きほぐしていく。
|
Causes of Carryover |
当初計画では書籍等で物品費をもう少し利用する予定であったが,研究の進展上,データによる計量分析の成果公表が早期に見込むことができ,そちらの作業を優先したため,物品費支出が抑制された。当該助成金については平成30年度の研究活動で使用される。
|
Research Products
(12 results)