2017 Fiscal Year Research-status Report
Labor Politics of Equal pay for equal work in Korea and Japan
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17K13680
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
安 周永 常葉大学, 法学部, 准教授 (10612393)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 同一労働同一賃金 / 最低賃金 / 労働組合 / 戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における「同一労働同一賃金」をめぐる政治過程を韓国との比較で分析することにある。同一労働同一賃金は、安倍政権だけではなく、労働組合、経営側、主要な政党が取り上げているが、その中身は大きく異なっている。従来の雇用慣行では、男女の賃金格差、正規と非正規の格差、世代間の賃金不平等が解決できないという共通認識はあるものの、それをどのようにどこまで改善するかによって、同一労働同一賃金の言説の使い方が異なっているからである。
こうした問題意識から、初年度は、日本と韓国のミクロレベルにおける賃金制度の変化を分析することであった。そのために、賃金制度の変化にかかわるアクターを訪問し、インタビュー調査を行う予定であった。しかしながら、日韓ともに賃金制度は、今なおダイナミックな議論と変化が生じようとしている。例えば、日本においては、日本郵政グループの正社員に対する各種手当を廃止することで、正社員と非正社員の格差是正が進められており、韓国においては、公共企業における成果給賃金制度の導入が中止された。
こうした点を踏まえ、今年は今変化が激しいミクロな動きではなく、日韓ともに非正規労働者に大きな影響を与えうる最低賃金について研究を進めてきた。これを分析することで、両国の賃金格差を緩和をめぐる各アクターの違いを明らかにすることができた。すなわち、韓国においては、最低賃金の引き上げに関する労働組合と社会運動団体との連携が活発になっているのに対して、日本においては、それが見られていない。こうした違いが両国の賃金制度にどのような影響を与えるかを今後分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で言及したように、初年度にミクロなレベルを分析する計画であったが、今なおミクロレベルでの動きが激しいという理由から、両国の最低賃金について分析を行ってきた。最低賃金は、日韓ともに非正規労働者の賃金に大きな影響を与えうる制度でであり、非正規労働者の賃金の推移を把握するためにも重要である。当初の計画とは外れているものの、両国の同一労働同一賃金を分析するための欠かせないものである最低賃金制度を分析できたという点で、順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最低賃金に関する分析を踏まえ、企業レベル・産業レベルでの賃金にかかわる各アクターの戦略や行動を分析する。
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Causes of Carryover |
今年予定していた韓国調査が、北朝鮮ミサイル実験を踏まえ、先送りしたため、次年度使用額が生じたが、次年度に韓国調査を行う予定である。
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