2018 Fiscal Year Research-status Report
The Integrated Study on the Transformation of Modern State: from the Point of View of Critical Realism
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17K13682
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
加藤 雅俊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10543514)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 現代国家の変容 / 福祉国家 / 代議制民主主義 / 国民国家 / 国家論 / 緊縮国家 / 福祉国家改革 / 日豪比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、①理論研究として、現代国家の特徴を捉えるための理論枠組を構築するための準備作業を行い、②経験分析として、オーストラリア(以下、豪)および日本(以下、日)における国家の変容を多角的な観点から検討した。 まず、理論研究に関して、国家論に関する先行研究の批判的検討を通じて、現代国家の特徴を捉えるためには、政治システムの①インプット(政党や利益春暖を通じた利益媒介のあり方)、②アウトプット(主要政策の特徴とそのバイアス)、③前提(政治的意思決定の射程となる共同体のあり方と、国家機構のあり方)の各側面の変容に注目すること、すなわち「代議制民主主義-福祉国家-国民国家」の変容を分析的に整理することが重要となることを確認した。 次に、経験分析として、比較福祉国家論の観点から、日本における福祉国家の変容を分析的に整理し、保護主義的な諸政策により雇用保障に重点を置く一方で、家族福祉に依拠し、社会保障制度を未発達にとどめるモデルから、市場メカニズムを重視したモデルへと変化しつつあることを明らかにした。また、比較政治経済学の観点から、オーストラリアにおける緊縮国家化の特徴を検討し、政権の党派を超えて緊縮政策の採用が合意される一方で、政策対立の中心が経済社会政策から多文化主義政策などに移っていることを確認した。 以上のように、本年度は、現代国家論を展開するための理論研究、および、それをふまえた豪日を事例とした経験分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、上記のように、理論研究および経験分析のそれぞれにおいて一定の成果を残すことができた。しかし、諸事情(家庭面および体調面)により、海外出張を断念せざるを得ず、資料収集および海外研究者との意見交換という点で予定よりも遅れが生じてしまった。 さらに、研究を進めていくなかで、「代議制民主主義-福祉国家-国民国家」の各側面に関する先行研究が膨大に存在していることが明らかになったことに加え、国家論を展開するためのメタ理論的基礎と想定していた「批判的実在論」において急速な理論展開が生じていることが明確となった。現代国家の特徴を分析的に整理し、理論化していくためには、それぞれにおける最新の先行研究の知見をふまえた考察が不可欠である。本年度の研究を通じて課題は明確となったので、研究の後れを取り戻すべく、引き続き理論研究および経験分析に取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、①理論研究として、「代議制民主主義-福祉国家-国民国家」の各側面に関する先行研究の知見を批判的に整理することに加え、「批判的実在論」の理論展開を把握することに力点を置きたい。また、②経験分析として、理論研究の成果をふまえて、豪日における現代国家の変容を分析的に整理していきたい。 まず、理論研究に関して、政党論・利益集団論、社会的投資国家・アクティベーション論、ガバナンス論、多文化主義論などの最新の知見を把握することに加え、「批判的実在論」のなかでも、構造と行為主体に関する議論に注目して理論展開を整理することを通じて、現代国家の変容を捉えるための理論枠組を刷新・精緻化していきたい。 次に、経験分析として、これまで個別論点に注目して行ってきた豪日の比較分析の知見を整理したい。具体的には、上述の「代議制民主主義-福祉国家-国民国家」の変容という観点からこれまで蓄積してきた知見を再検討し、豪日を事例として、現代国家の変容の特徴とその背景にある力学を分析的に明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
上述のように、2018年度は諸事情で海外出張を断念したため、旅費等での支出が予定よりも大幅に少なくなってしまった。しかし、その一方で、国内で入手できる文献や資料を通じた研究(理論研究および経験分析)は着実に進めることができた。次年度は、これまで同様に、文献や資料の批判的検討を通じた研究を遂行する一方で、海外学会での報告も予定しており、研究成果を、国内・国外で積極的に発信していきたい。
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Research Products
(24 results)