2018 Fiscal Year Research-status Report
同盟と戦略の理論分析―ベトナム撤退期の米戦略転換と日米・米比・米タイ・米韓同盟
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17K13683
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
玉置 敦彦 都留文科大学, 教養学部, 講師 (50772480)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 同盟 / アメリカ / 国際秩序 / アジア太平洋 / 戦略 / フィリピン / 韓国 / 国際政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、アメリカの戦略と秩序構想に関する検討作業を中心に研究を進めた。この作業の目的は、第二次世界大戦後のアメリカのアジア太平洋地域に対する戦略を通貫する共通点を明瞭にすることにあった。 これを基礎として、2018年度は、前年度に得られた成果を歴史的な変化の中に位置づけることが目標だった。共通点を意識しながらも、その通時的な変動を確認するという作業である。そのため、本研究の焦点である70年代の前後、つまり冷戦初期、また冷戦後の状況についての見取り図を固めることを試みた。 この点、2018年度は、予定通り、学会及び研究会にて、報告とそのためのペーパーを執筆することができた。4月には所属機関の異動があったが、概ね態勢が整った2018年6月には、アメリカ学会の若手研究者セミナーにおいて、報告とペーパーの提出(英語)を行った。この研究は、本計画の理論枠組みを基礎として、二つの成果を目指したものである。一つは、アメリカ主導の国際秩序と同盟の形成期から本研究の議論が妥当することを示すこと。またもう一つは、本計画の焦点である70年代から80年代にかけて、本研究の議論を発展させる形でアジア太平洋地域における秩序構想についての試論を展開することである。また6月には、これも前年度の予定通り、冷戦終結後のアメリカの戦略と同盟についての試論の口頭報告を行った。また11月には、オーストラリアにおいて研究報告とペーパーの提出を行った(英語)。これは日本に焦点をおいてアメリカの秩序について検討したものである。以上三つの報告と二つの関連ペーパーにより、本研究の枠組みに基づく、冷戦期を通観した時代把握にむけて着実に研究が進展したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究状況は、内在的には十分な進捗を示していると言える。2018年度の開始時点で掲げた目標、すなわちアメリカの戦略と秩序構想の通時的変化の把握について一定の目途をつけることができたからである。研究成果の報告についても、ほぼ2018年度初頭に予定した通りに達成することができた。また2018年12月以降は、個別の同盟研究の成果について一定のサーベイを行うことができた。今回の成果は、特に東南アジアについて基礎的な調査をある程度すすめることができた点にあるだろう。 他方で、2018年度に続いて、2019年度にも研究機関を移籍したことによって2018年度末には必ずしも十分な研究の進捗が見られたわけではない。異動に伴う準備や環境の変化への対応は、基礎的な調査を行う際に、少なくとも促進要因とは言えないだろう。 以上のように、2018年末までは予定通りかそれ以上の研究の進捗が見られた一方で、2019年1月から3月までは必ずしも順調ではなかったといえよう
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、個別の同盟研究の成果を進めるとともに、全体の枠組みとの間の調整を図ることが最大の課題である。 2019年度春には、研究全体の構想を、これまでの研究との関連から整理する作業を行い、これを研究会で報告することを予定している。また6月と7月には、それぞれ日本の研究会と国際学会において報告を行い、アメリカの戦略、同盟、国際秩序構想についての本研究の成果について、国内外からのフィードバックが得られる予定である。 また、日本語及び英語において、日本をめぐる国際関係の視点から本研究の成果の一部を公表することを予定しており、夏から秋かけて一応の成果がまとまる予定である。公刊自体は来年度となる可能性もあるが、いずれにしても成果の一端を公刊できるだろう。 2019年度の目標は、具体的な政治過程の精査という研究の本体を文章にし、さらに資料によってこれを裏打ちすることを目指すことである。現所属先に腰を落ち着けて、基礎作業に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
2018年度と2019年度に、二度にわたって連続で所属機関を異動することになったため、物品の購入や在外調査が非常に難しい状況に置かれた。とりわけ、2017年度所属機関と異なり、書籍等を消耗品として購入できなかったことが予定通りの執行が難しかった最大の要因である。2018年度は、それまでの成果をまとめて公表することと、手持ちの資料で基礎的な調査を行うことに集中した。2019年度は、予定していた電子機器や書籍等の購入をはじめとした大規模な支出が可能となる見込みであり、また海外調査も行える見込みである。
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