2018 Fiscal Year Research-status Report
日韓安全保障協力の形成メカニズム:非西洋型国際関係理論の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
17K13689
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Research Institution | Research Institute for Peace and Security |
Principal Investigator |
冨樫 あゆみ 一般財団法人平和・安全保障研究所, その他部局等, 客員研究員 (50783966)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷戦期日韓関係 / 安全保障 / 日韓協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年度目となる平成30年度は、昨年度取り組むことができなかった資料分析を中心に研究した。資料分析は、(1)1965年日韓国交正常化以降から1980年までの日韓関係について、および、(2)日韓における政治指導者の外交理念および安全保障認識を明らかにすることを目的として行った。特に冷戦期とデタント(1965年から1980年)における日本の対韓認識は、日韓が安全保障協力を開始した1990年代と、国交正常化を遂げて以降、どのように変化したのかという観点から探った。 具体的に(1)に関しては、日韓国交正常化交渉過程における、日本の政治指導者(池田勇人、佐藤栄作、田中角栄)の安全保障および外交情勢認識を国会議事録、回顧録を中心として資料研究を行った。また、1968年から1970年代における日本の政治決定過程、および、朴正煕政権の安全保障観について、先行研究を中心とした検証を加えた。 今年度行った国内の資料研究の結果、冷戦期日韓安保関係に関する先行研究との差別化を図ることが難しく、研究の独自性をどのように探していくかという問題に直面している。 (2)に関しては、東京オリンピックにおける日韓関係を外交的側面から探った。その研究成果の一部であるが、韓国現代日本学会夏季大会にて、「1964年東京オリンピックと日本外交」という題目で報告をおこなった。また、その報告を、「1960年代初頭日本の対朝鮮半島外交に関する考察」(韓国研究センター年報、2018年、77頁ー84頁)としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は資料研究を中心に行った。1965年から1980年代にかけての日本国会議事録の資料研究はほぼ完了している。一方、韓国の国会議事録の分析に時間がかかっているため、「遅れている」と評価した。その他の大きな理由としては、文在寅政権発足以降、米朝首脳会談が2回行われるなど、平成30年度の北東アジア情勢は急変しているため、現代の日韓安全保障協力を分析することに時間を取られてしまったことが挙げられる。加えて、当初予定していたワシントンへの資料調査を行うことができなかった点も、「遅れている」と評価した理由である。 初年度を振り返り、昨年度の研究計画では、平成30年度以降は国内外の中朝関係専門家もしくは冷戦期の中国専門家などとの意見交換を行う予定であったが、国外の中朝関係専門家にコンタクトすることが難しく、課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、平成30年度に遂行できなかった、韓国側の資料研究を終わらせることを第一の目標とし、論文の作成に取り掛かりたい。第二段階として、平成29年に取り組んた理論研究と、資料研究を組み合わせ、日韓安全保障協力の形成メカニズムについて仮説と検証という最終段階を進めていきたい。また、今年度、韓国からの研究者を招いて、国際研究集会を開催することを計画している(日本人研究者2名、韓国人研究者2名)。 また、冷戦期の日韓安全保障関係について、既存研究との差別化をはかることが難しいという壁をどのように克服していくべきか、提出済みの研究計画書に則って検討していきたい。
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Causes of Carryover |
主に旅費について計上予算を執行できなかったためである。第一に、平成30年度に計画していたアメリカ国会図書館への資料調査に行けなかったため、および、韓国における研究発表では、先方の学会が旅費(往復航空券、宿泊費)を負担したためである。最終年度では、当初の研究計画に乗っ取り、アメリカ国会図書館への資料調査に充当したい。
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