2017 Fiscal Year Research-status Report
戦争終結の政治学-アメリカのベトナム戦争終結過程、1969-1975年-
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17K13691
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
手賀 裕輔 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 准教授 (10738975)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ベトナム戦争 / ニクソン・キッシンジャー / 戦争終結 / 南ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1969年から75年にかけての米国のベトナム戦争終結政策を分析することを目的とする。1969年に発足したニクソン政権にとって、ベトナム戦争の早期終結は最優先課題であった。当時の米国は、戦費増大、反戦世論の高潮、軍事的膠着状況の長期化などの難問に苦慮していたためである。しかしそれにもかかわらず、米国は戦争終結過程において戦争を拡大し、さらに4年もの間戦争を継続した。本研究は、なぜ、米国のベトナム戦争終結過程はこれほど長期化し、難航したのか、その原因の解明を目的とする。 本年度は、近年急速に進展する南ベトナム(ベトナム共和国)研究の成果を吸収し、それをもとに、従来等閑視されてきたニクソン・フォード政権の対南ベトナム政策について考察した。当初の計画では、本年度は米国の国立公文書館(メリーランド州)などで史料収集を行う予定であったが、最新の研究動向や本研究課題の解明という観点から、以上のような変更を行った。 本年度の研究成果としては、アメリカ学会での発表(「ニクソン・フォード政権の南ベトナム政策、1969-1975年」アメリカ学会、2017年6月4日)、韓国の国民大学日本研究所が主催する日本外交史研究会での発表(「ベトナム戦争終結期の米国の東南アジア秩序構想-1969-1975年」、2017年8月31日)が挙げられる。また、研究成果の一部を利用して、アメリカ学会編『アメリカ文化事典』(丸善出版、2018年)に「特殊部隊」(コラム)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、南ベトナム研究に関する二次資料(書籍、論文、資料集)の収集と読解を中心に進めた。当初の研究計画を変更し、米国での史料調査を見送ったが、南ベトナム研究に関する知見を深め、それを自分の研究に組み込んだ形で成果を出すことができた。その意味では、研究はおおむね順調に進展していると言える。2018年度には、本年度の成果を生かし、より効率的な史料調査を米国で行うことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、米国政府のカンボジアやラオスへの戦争拡大の決定過程を検証することを目的とする。1970年から1971年にあたるこの時期は、先行研究では等閑視されてきた「空白」期間であるが、終戦戦略が再検討された重要な時期であると考えている。早期終戦を目指しながら、戦争がインドシナに拡大するこの時期の米国政府の政策決定過程を一次史料に基づき明らかにしたい。そのために、米国のニクソン大統領図書館を中心とした史料調査を行うことが中心的な課題となる。
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Causes of Carryover |
本年度は、南ベトナム研究関連の資料の収集や読解を優先し、当初計画していた米国での史料調査を延期したため、その費用を翌年度に繰り越すことになった。計画を変更することになったのは、この時期に近年急速な進展を見せる南ベトナム研究の成果を取り入れることが今後の研究を進める上で必要不可欠であり、課題の解明にも資すると考えたためである。本年度実施できなかった米国での史料調査は、次年度以降に実施する予定である。具体的には、来年度は米国カリフォルニア州のニクソン大統領図書館においてホワイトハウス関連資料を収集したい。
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Research Products
(3 results)