2019 Fiscal Year Research-status Report
戦争終結の政治学-アメリカのベトナム戦争終結過程、1969-1975年-
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17K13691
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
手賀 裕輔 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 准教授 (10738975)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベトナム戦争 / ニクソン・キッシンジャー / 戦争終結 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、米国での資料調査、先行研究の整理およびこれまで収集した一次資料の読み込みを行った。とくに本年度の研究で重視したのは、ニクソン大統領および側近が、ベトナム戦争終結へ向けた重要な政策を決定する過程で、情報機関の収集・分析した情報がどのような影響を及ぼしたかという問題である。 この問題を解明するために、8月には米国メリーランド州の第2国立公文書館(the National ArchivesⅡ)、ワシントンDCの議会図書館(the Library of Congress)での資料調査を実施した。まず、国立公文書館では国務省、国防総省、中央情報局の南北ベトナムに対する情報活動に関する資料を中心に調査を行った。 その結果暫定的ではあるが、以下の点が明らかとなった。①各政府機関は、自分たちが推進したい政策にとって都合の良い情報を強調して報告していた。②これらの情報分析は必ずしも状況を正確に反映しておらず、不正確あるいは意図的に歪曲されたものが多かった。③大統領や側近も希望的観測に合致する情報を重視し、正確な情報であっても都合が悪い情報は軽視された。④米政府のベトナム政策は、正確な情報源を欠く上に、政治的に歪められた情報に基づいて下された。 また、議会図書館においては、当時の政府当局者、連邦議会議員、ジャーナリストらの私文書の調査を行なった。これまで、米政府、とりわけホワイトハウスの文書に注目して調査・分析を行なってきたため、ベトナム戦争政策に対する様々な反応や評価を知ることができた。 本年度の研究成果としては、共同で翻訳作業に加わったテイラー・フレイヴェル(松田康博 監訳)『中国の領土紛争--武力行使と妥協の論理』(勁草書房、2019年)が公刊された。とりわけ、新古典的現実主義および合理的選択論に関する理論部分を中心に、多くの学術的知見を吸収することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、米国での資料調査・収集を除いて、研究活動の大半を論文や書籍の執筆作業に充てた。そのため、目に見える成果としての研究成果は一見乏しいように見えるが、これまでの基礎的な調査や分析を土台として研究は着実に進められていることから、おおむね順調に進展していると言える。 本来であれば、2019年度には、1973年から1975年にかけてのベトナム和平成立から崩壊までの時期を対象に研究を行う予定であった。しかし、2018年度に行うはずであった米国国立公文書館での調査が、米政府機関の閉鎖により2019年度に延期せざるをえなくなった。そのため、従来の計画では2019年度に実施する予定であったフォード大統領図書館(ミシガン州)での調査を行うことができなかった。拙速に調査を行うよりも、準備に時間をかけ、実りあるものにすべきと考え、研究期間を1年間延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は改めて、ベトナム和平成立後の1973年から1975年におけるニクソン・フォード政権の対インドシナ政策について検証することを目的とする。一度成立したはずの和平がなぜ崩壊することになったのか、なぜ米国政府は和平を維持することができなかったのか、どのような国内外の問題に直面していたのかについて考察したい。関連する先行研究では、ベトナム和平が成立した1973年までを対象とするものが多い。しかし、ニクソンやキッシンジャーがどのような意図を持ってベトナム和平を実現したのかを正確に理解するためには、1975年までを分析の対象とする必要がある。 先述したように、本来であれば2019年度に実施するはずであったフォード大統領図書館での調査を2020年度に延期することとした。このフォード大統領図書館での資料調査を行うと同時に、これまでの研究成果に基づき、論文と書籍の執筆を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2018年度に米国国立公文書館での資料調査が政府機関閉鎖のために実施できず、その後の資料調査の計画変更を余儀なくされた。その影響で、研究期間を一年延期し、2019年度に計画していたミシガン州のフォード大統領図書館での調査を2020年度に実施することにした。そのため、フォード大統領図書館での資料調査のための費用を次年度に繰り越すことになった。
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Research Products
(1 results)