2020 Fiscal Year Research-status Report
戦争終結の政治学-アメリカのベトナム戦争終結過程、1969-1975年-
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17K13691
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
手賀 裕輔 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 准教授 (10738975)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ベトナム戦争 / 戦争終結 / ラオス侵攻作戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、当初の予定では米国ミシガン州のフォード大統領図書館での資料収集を中心として、1973年から1975年にかけてのニクソン・フォード政権期のベトナム戦争政策について調査・分析を行うことになっていた。しかしながら、新型コロナウイルスの流行により、米国全土の大統領図書館及び国立公文書館は閉鎖されてしまったため、資料調査を行うことは不可能になってしまった。 そこで急遽方針を変更し、2020年度は資料調査を諦め、オンライン・データベースで収集可能な資料、とくに当時の米国におけるベトナム戦争に関する世論調査結果のデータを体系的に収集することとした。こうした世論調査結果を分析し、国内世論が政府の外交政策決定にどのように影響し、ベトナム戦争終結政策が形成されていったかを考察した。 こうした研究の成果の一環として、2020年度には論文「ニクソン政権によるラオス侵攻作戦の決定とその失敗、1970-1971年」『法学研究』第94巻2号を公刊した。本論考では、ニクソン政権が1970年のカンボジア侵攻によってベトナム戦争を拡大し、国内外で苦境に追い込まれたにもかかわらず、ラオス侵攻を実施することでさらに戦争を拡大した理由について考察し、最終的にこれが失敗に終わった原因についても分析した。苦境に追い込まれたニクソン政権は劇的な軍事作戦によって状況を打開できると考えて作戦を実行したが、その決断は現実を踏まえたものではなく、希望的観測に基づくものであったために、失敗に終わったとの結論が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス流行の影響で、公文書館のみならず図書館なども閉鎖されるなど、研究環境が大きく変化した。そのため、当初の計画どおりに研究を進めることはできなかった。しかし他方で、新型コロナウイルスの流行を機に、オンラインで収集できるデータや資料は増加した。とくに本年度在外研究で滞在した米国では、一次・二次資料やデータの電子化が大きく加速した。この状況を最大限に活用すべく、オンライン・データベースを駆使して体系的な世論調査結果の収集・分析を行うことができた。これまでも部分的にベトナム戦争に関する世論調査結果について調査は行われてきたが、包括的、体系的には行われてこなかったため、非常に貴重なデータを収集することができた。こうした研究の成果の一部として、先述した「ニクソン政権によるラオス侵攻作戦の決定とその失敗、1970-1971年」『法学研究』第94巻2号を公刊することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本来であれば、ベトナム和平成立後の1973年から南ベトナムが崩壊する1975年にかけてのニクソン・フォード政権期のベトナム戦争政策について分析するために、米国ミシガン州のフォード大統領図書館を中心に米国での一次資料の調査・収集活動を行いたいと考えていた。しかし新型コロナウイルス流行の状況を踏まえれば、調査活動が再び可能となるかは不確実であると言わざるをえない。そのため、米国での資料調査の準備を進めつつ、それと同時に米国での調査が行えなかった場合に備える必要がある。幸い本年度に収集した資料やデータ、書籍とこれまでに収集してきた外交文書を組み合わせることで、従来から進めてきたベトナム戦争終結期の米国の南ベトナム政策についてさらに考察・分析を行うことができると考えられる。以上のように方針に柔軟性を持たせることで、不確実な状況に対応したい。
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Causes of Carryover |
2020年度に新型コロナウイルスが流行し、資料調査を行う予定であった米国ミシガン州のフォード大統領図書館をはじめ、米国内の公文書館がすべて閉鎖されてしまい、調査活動を実施することができなかった。そのため当初の計画を変更して、研究期間を再度延長し、米国での調査のために充てる予定となっていた費用を次年度へと繰り越すこととした。
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Research Products
(1 results)