2017 Fiscal Year Research-status Report
学校選択問題における統一的戦略行動の分析:理論と実験
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17K13697
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
熊野 太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マッチング理論 / マーケットデザイン / 学校選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、学校選択問題を含むマッチング市場における参加者の戦略行動について分析するに当たり、理論とその検証の準備に多くの時間を割いた。理論に関しては、以下に詳述するように概ね順調に結果を得られた。一方で検証のための実験の準備については、実験用プログラムの開発は順調であるが、被験者の確保について問題が残る。
理論:参加者の統一的な戦略行動として、研究計画にあるような undominated maximin strategy に着目して分析を行った。制度の望ましい性質として考えられている strategy-proofness と undominated maximin strategy は整合的であることが示された。また、実際のマッチング市場では現在も多数を占めている Boston mechanism は strategy-proof ではないが、undominated maximin strategy はそのような制度の下でも存在し、既存研究が指摘する Boston mechanism における参加者の行動をうまく説明しているような結果が得られた。今度は、undominated maximin strategy 均衡の性質をより詳しく調べ、さらに一般的な制度の下での性質も特徴付ける。
実験:undomianted maximin strategy は、相手の行動に直接的に依存する戦略ではないため、既存研究が主として実施してきた複数の被験者の行動結果から得られた制度の比較分析ではなく、個人の意思決定問題に注目した実験を行う。そのための実験プログラムの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、研究計画に沿って研究は進捗している。 理論分析については、予定通り結果を得られた。また、当初予定していたよりも一般的な環境において、面白いアイデアが発見され、UC Berkeley の Haluk Erign 先生と議論が深められた。よって、理論分析は予定以上に進捗している。 実験分析については、一年目は準備のために時間を割いた。その結果、実験プログラムは開発できた。一方で、実験を行うための被験者と実験場所については、今後交渉を進める必要があり、総合して、予定よりも少し遅れている。理論分析と実験分析の進捗状況を総合すると、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに2年目の研究を遂行する。理論分析については、undominated maximin strategy 均衡の性質を明らかにし、一般的な制度の下での特徴づけも行う。それらの結果は少なくとも国内のセミナー等で発表する予定である。年度末までに working paper にまとめて公表する。また、新たに発見したアイデアについては、UC Berkeley の Haluk Ergin 先生と定期的に意見交換をした上で、UC Berkeley を訪問できればよいと考えている。実験分析については、被験者数の確保と、実験場所の確保が目下の課題であり、いくつかの大学との交渉を進める。もし今年度中に予定していた規模での実験が実施できない場合は、プレ実験として規模を小さくした実験を本学の学生を被験者として実施する。
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Causes of Carryover |
実験のための費用を次年度に繰り越すことになった。本研究では、被験者は知能指数によって分類される。その分類のため、被験者プールを作成するためには事前に知能指数を測る必要があり、そのための予算を計上していた。本年度は被験者確保ができなかったため、予定していた被験者プール作成のための謝金を次年度に繰り越すこととした。
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