2018 Fiscal Year Research-status Report
学校選択問題における統一的戦略行動の分析:理論と実験
Project/Area Number |
17K13697
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
熊野 太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マーケットデザイン / マッチング理論 / 学校選択制 / 市場構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、理論内容の深化とともに実験を実施した。理論においては、戦略行動の分析として、当初計画の DA メカニズムと Boston メカニズムの比較よりもより実践的なメカニズムの比較に重要性を見出したため、実践的メカニズムの構築に注力した。結果として現実を描写する新しいメカニズムを生み出した。また実験では、新たに構築したメカニズムの戦略行動に対する理論結果と実際の行動を比較分析した。
新しく構築したメカニズムは、学校にとって市場の選択が可能である場合に、いかなる戦略的均衡が存在するかを示した。アメリカを代表とする欧米および中国の一部の学校選択制は中央集権的メカニズムを使っている。しかし、その対象は公立学校が主体であり、私立学校は依然として独自の制度を使用している。中央集権的メカニズムのメリットは複数合格による非効率性を排除することにあるが、一方で独自制度によって中央集権的メカニズムで得られるよりも望ましい学生を得ることが可能でもある。既存のマッチングモデルは、市場に参加している学校や学生を所与としているため、このような学校側のインセンティブを分析できなかった。"Designing the market structure in matching problems" (栗野、丸谷との共著)では学校側が参入する市場を選択することが可能なモデルを構築し、そのもとでどのようなメカニズムが有用かを明らかにした。主要な結果として、選好が似通っている学校は同じ市場に参入することを選択し、さらに部分ゲーム完全均衡では学生のみならず、学校も真実表明することが最適となることを示した。この結果は、既存の不可能性をモデルを豊かにすることで克服できることを示した画期的な結果である。さらに本結果に対するプレ実験として、横浜国立大学の学生30人程度を対象に実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも実践的かつ学術的にも重要な問題を定式化し、そのもとで新しい結果が得られた。理論内容に関しては現在ワーキングペーパーにまとめている最中であり、また共著者のそれぞれが様々なセミナーや学会で報告している。また実験に関しても、プレ実験を終え、そこでえられた知見を下に本実験の準備に入っている。来年度には投稿可能であると考えている。
上記研究に加えて、別の側面からの実践的環境における戦略行動の分析も進んでいる。それは、進学振分け制度に代表される、定員数が可変である場合におけるメカニズムの構築である。理論モデルの構築は既に終えており、主要な定理の証明に現在取り掛かっている。
以上から本研究は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の1つ目の成果である "Designing the market structure in matching problems" (栗野、丸谷と共著)について、ワーキングペーパーにまとめ、海外の大学への滞在を通して様々の意見交換を予定している。また本実験の実施も計画している。その上で、国際雑誌への投稿を行う。
2つ目の成果である、定員数が可変である場合のメカニズムに関して、理論を完成させワーキングペーパーとする予定である。またこのメカニズムの理論結果を実験によって確認するために、プレ実験も計画している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験の実施(謝金)と海外の大学への滞在(旅費)が次年度以降に実施されることとなったため。次年度は既にカナダのMcGill 大学での滞在研究が決定しており、またそれ以外の大学への滞在も交渉中である。実験の実施に関しても現在実験プログラムを作成中であり、次年度に実施する。
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